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教育トランスクリプション
00:00科学による実証主義が世界を覆い尽くす中
00:08フッサールは最後の力を振り絞って
00:12学問と哲学の危機を訴えます
00:16そして科学以前の世界である生活世界の重要性を問うのです
00:30すでにガリレイの下で数学的な規定を与えられた理念体の世界が
00:38我々の日常的な生活世界にすり替えられていたということは
00:44極めて重要なこととして注意されねばならない
00:49フッサールが復権を唱えた生活世界とは何か
00:55読み解いていきます
01:00100分で名著 司会の阿部美知子です
01:25今月はドイツの哲学者フッサールの危機書を読み解いています
01:30伊集院さんここまでいかがですか
01:321回目始まる前にスタッフから
01:34この番組史上一番難しいかもしれないよって釘を刺されて始まって
01:40でもこの本が書かれた時代の背景とかはついていけたと思います
01:47ところがこの第2回でこの全部で4回の中で結構難しいというふうに伺っております
01:56プレッシャーかけてきますね
01:57はい頑張りますよ
01:58指南役は哲学者の西謙さんです
02:01西さんよろしくお願いします
02:02よろしくお願いします
02:03今回は第2部見ていきますね
02:06はいまず第1部で実証科学がすごく発展して社会が一緒に発展していった
02:13でも共有する理念みたいなものはボロボロに崩れ
02:17それはもう再建できない状態であると
02:20そこでフッサールは実証主義の考え方がどこから出てきたのかというのを歴史でたどっていって
02:28まずは物理学の成り立ちと言いたいんですが
02:31これが気化学にモデルにしているので
02:35さらにその気化学に今で遡って
02:38学問の成り立ちみたいなところから解き起こす
02:42そういう流れです。
02:45フッサールによればこの世界は異なる2つの対照的な世界に分けられます一つは私たちの目の前に広がる日常の世界普段私たちが見たり触れたりして生きているこの世界のことをフッサールは生活世界と呼んでいます
03:10もう一つが物理学が概念と数式によって語る世界です
03:18こちらは客観的な真の世界と考えられていました
03:24どちらが本当の世界なのか
03:28フッサールは疑問を投げかけます
03:32我々が
03:35学問以前の生活において経験する
03:38色や音
03:41熱
03:42物体そのものの重さ
03:44因果的に考えて周りの物体を熱くする熱線などは
03:51物理学的には音波や熱波の振動などといった携帯世界の純粋な出来事を告知している
04:01今日ではこのように感性的な色や音が
04:05おしなべて携帯世界での出来事を表していることは
04:09疑問の余地のない自明なものとみなされている
04:14生活世界で生じる物事はバラバラではなく規則性を持っています
04:22火に近づくと暖かい
04:26そこに紙を近づけると紙が燃える
04:30このように生活世界の出来事には
04:34様々な習慣が存在しています
04:37この習慣を利用して私たちは
04:43予見を立てて生活に役立てているのです
04:47それでは生活世界での予見を
04:54学問的かつ厳格なものにするには
04:56どうしたらいいのでしょうか
04:59ここで数学が我々の教師として現れてくると
05:04フッサールは言います
05:06例えば異なる重さの物体も同じスピードで落下する
05:13というガリレーの落体の法則は
05:16数式で説明できる現象です
05:19このような数式を用いることで
05:24生活世界に完全で精密な予見が成り立つ
05:28フッサールはそれが物理学だと考えました
05:33つまり世界は客観的な真の世界と
05:41生活世界の2つに分かれると言っていましたよね
05:44生活世界って言っているのは
05:47僕らが普段暮らしている日常の世界で
05:51一つは見たり触ったり聞いたりしている
05:53この世界ですね
05:55色、音、匂い、明るさなんかがある
05:57あともう一つは
05:59例えば魚はそのままだと腐っちゃうから
06:02火を入れとくと長く持つ
06:05そういうことを人間はやるわけですね
06:07予見とかって言ってましたけど
06:09予測を立てている
06:10でもまあ大体ですよね
06:13どれぐらいの熱でどうすれば
06:15どれぐらいの時間持つとかって
06:17あんまりよくわからない
06:18大体で回っている世界
06:20これ生活世界です
06:22これに対してこの物理の語る
06:25この法則の世界ですよね
06:28これってめちゃめちゃ完全予測できる
06:32きっちりした世界なんですよ
06:34重さを持った球にある力を加えれば角度を加えて
06:40角度があってこう飛んで落ちると
06:43これ何メートル先に落ちるみたいなことが
06:45完全予測できる数学的な世界ですよね
06:48でどっちが本来の世界かっていうと
06:54普通ですね
06:55科学の語るのが客観的な真の世界で
06:58僕らのこの生きてる生活世界は
07:02あくまでも人間にとってそう映ってるだけじゃんっていう風に
07:07多く思いますよね
07:08でもフッサールは
07:10え果たしてそうなのって
07:12むしろ元になってんのは生活世界なんじゃないか
07:15まあ確かに音もですね
07:17例えばうるさいとかっていうのが人によって違いますけど
07:21何デシベルとかって言われるのが多分こっちで
07:23だけど最初はやっぱこっちかなっていう気がしますね
07:26まあそうですね
07:27確かになんかこう主従関係っていうかが
07:30ちょっと逆になってるなっていうのは分かりますね
07:33朝自分が寒いって感じたんだけど
07:36気温を確認したら何度だから
07:38そんなに寒くないんだって言われてみれば変な話ですよね
07:43なんかちょっと主従関係今言われてみれば
07:47逆の生活を送りがちか
07:50逆転してるかもしれないですね
07:52ちょっとまず気化学から言ってみたいんですが
07:55これもともとどっから起こったか
07:57フッサールが言うには
07:59測量術っていうのから始まったっていうんですね
08:02気化学のルーツが
08:03エジプトのナイル川
08:05あれまあしょっちゅう氾濫すると
08:08そうすると今まで持ってた自分の土地と
08:12隣の人の土地はもう訳分かんなくなっちゃうんで
08:15それをきっちりやっぱ分ける必要が出てくるじゃないですか
08:19そういう時に面積をちゃんと測って
08:23客観的にちゃんと数値にしとくっていうのができると便利ですよね
08:27どうやったら共有できると思いますそこで数字なわけだねえ
08:33俺は広めの土地を持ってたぞ
08:36いや俺の方が広かったぞっていう話でなくするために
08:39ちゃんと測る
08:40メジャーみたいなもの
08:42メジャーだったり
08:43それこそ計算式が大事になったり
08:46単位が大事になったりしてくるわけだ
08:48おっしゃるとおり
08:49やっぱまずね単位を決めるんですよ
08:52そうするとこのいくつ分っていうので長さが測れる
08:56面積測る場合には
08:581尺と1尺で正方形作って
09:02これの何枚分かっていうので
09:04面積が測れるようになる
09:07数値に書いて記録しとけば
09:09これも保存もできるし
09:11知らない人ともその場に現場にいない人とも共有できる
09:15そういう性質をちゃんと体系化して
09:19いつでも誰でも共有できるような知識にしていったのが
09:24気化学と呼ばれるものなんですね
09:26ガリレオ・ガリレイはおそらくこう考えただろうと
09:31物の運動っていうのも
09:34この気化学みたいに
09:36本当は数学できっちり説明できるんじゃないかなと
09:40実際に試してみたら
09:42物を落とすわけですよね
09:44そうすると重い鉄球も小さい鉄球も同時に落ちると
09:50何秒経ったら何メートル落ちるんだっていうのを
09:54ちゃんとデータ取ってみると
09:56それがきれいな二次式で書けたわけ数式で
10:00これでものの運動を全部
10:04数学で説明できるんじゃないのっていうアイデアから
10:08物理学が発展して
10:10ニュートンっていうのが出てきて
10:12天体の運動から物の運動から
10:16完全に予測できる超優れもの体系を作っちゃったんですよ
10:21何と言ったんだったら
10:22科学技術応用できますよね
10:24そうすると生産力が上がる軍事力が上がるだから
10:28ちょっと極端な言い方をすると
10:30これでもってヨーロッパが強大になったと
10:33言ってもいいようなところがあるぐらい
10:36この物理学っていうのは優れもんだったわけですね
10:40逆にちょっともうない生活の予想がつかないぐらい
10:44ところがこれが学問の基本のモデルにされちゃうわけです
10:50つまり物理学っていうのはデータを取って証明するわけですけど
10:54データなしで議論するっていうのは
10:57哲学みたいなのはそれはもうエビデンスないんじゃないのっていう
11:02例の実証主義的な学問観が生まれてしまうルーツも
11:06あまりにも物理学が成功しすぎちゃったところにあると
11:10便利なのは間違いないし
11:13これがあるおかげで発展したんだから
11:15それを全否定するわけじゃないんだけれども
11:18それだけって考える
11:20それ以外は間違ってる必要ないっていうことは
11:26ちょっとおかしいぞ危険だぞってそもそも考えてよ
11:29そっちありきで始まったんじゃないっていうところですか
11:33はいそうですおっしゃるとおりで
11:34我々が生きている暮らしの世界生活世界って
11:38やっぱり感情と思いと感覚の世界ですよね
11:42そのリアリティーもやっぱここ大事でしょ
11:45そういう主張がここには含まれていると思います
11:48私たちが生活世界で見ているものには
11:55意味や価値がくっついています
11:57例えば自然にも美しさや懐かしさなど感情を覚えます
12:04しかしガリレーに始まる数学的自然科学は
12:11意味と価値をすべてそぎ落とし
12:15純粋な物体の世界という観念を作り出しました
12:20では意味や価値はどこへ行くのでしょうか
12:26それは自然から剥ぎ取られて心の中に入れられるのです
12:33ここで世界は自然と神的世界という
12:42いわば二つの世界に分裂するのである
12:46このように世界が分裂しその意味が変わったのは
12:52自然科学的合理性を模範にしたことの
12:57当然の結果であった
12:59自然科学っていうのはものすごく大きな成果を生み出したんですけれども
13:05それによって自然の世界と心の世界とが
13:102つに分裂してしまってるっていうふうに
13:14フスターレは言うんですね
13:15そのことをものと心の二元論という言葉で表現しています
13:21はいこちらなんですね
13:23まずものの方は法則エネルギー重力電磁気力といったものですね
13:29心はというと色ですとか匂いとか自由価値意味というもので
13:34主観的なものということでしょうか西さん
13:38ものの方はさっき言った物理の世界のことなんですよね
13:42それに対して色とか匂い価値意味
13:46そういったものが全部心の中に入れられてしまう
13:49もともと私たちが生きている世界生活世界では
13:53結構物と心って溶け合ったところがあるんですよ
13:57僕それが離れる瞬間みたいなこと分かるんですけど
14:02数字ともともとの心みたいなものが離れる瞬間で
14:08一番分かりやすいのがダイエットなんですよ
14:11ダイエットってモテたくてダイエット始めるんだけど
14:14これがどっかの瞬間数字競争になるんですよ
14:17要するにベストの可愛らしさみたいなのを求めたかったのに
14:225キロ痩せたら6キロ痩せたらやっていくうちに
14:26数字の話になってくると
14:27そんなに痩せなくてもよかったのにとか
14:31もともとはよりモテるために
14:34どうしたらいいかのよすがとして
14:36数字があった方が分かりやすいっていう
14:38近い関係であったものが
14:40どっかで引き離されたたんに
14:42下手すればストレスや不健康の方に行くっていう
14:47僕この例えが一番実感があります
14:49でこの引き離されるよということが
14:53具体的にどんな問題を引き起こすかというと
14:55こういうことを言っているんです
14:57一つずつ教えていただけますか
14:59価値って全部あくまでも主観のものでしょ
15:02客観的にはそんなもの存在してませんよ
15:05って話になるんで
15:06その人間の抱く価値とか道徳みたいなものが
15:10なんか頼りないものになってくんですよ
15:13だって真理は物ですから真理は電磁波ですから
15:17そういう世界になっちゃうってこと
15:19分かります神社がただの木材だろっていうふうに思うようになるってことですね
15:23そのとおりです
15:24お地蔵さん石だからっていうそういうことですよね
15:28分かります分かります
15:29じゃあ2番目の認識の問題なんですが
15:33正しい認識って何だろうと思うと
15:37主観が心がちゃんと客観の世界に一致する
15:42ところが心の世界と物の世界が
15:48ないしは主観の世界と客観の世界が完全に分かれちゃいましたよね
15:53そうすると認識の正しさがどう考えたらいいかが分かんなくなっちゃう
16:00そういう問題が起きる
16:01そしてもう一つありましたよね
16:03自由の問題
16:04これはね結構分かりやすい
16:06人って普通やっぱり
16:08いろんなことを自分で考えて決めてますよね
16:12なんだけど
16:13真の世界ってやっぱり客観なわけじゃないですか
16:17心の世界主観の世界っていうのも
16:20結局脳が作ってるっていう風にやっぱり考えられますよね
16:23そうすると自由に判断してると思っても
16:27それは結局脳科学的に言うと
16:30これ決まってんじゃない
16:32人間に自由意志って本当はないんじゃないっていう問題が起こってくるんですよ
16:39実際に鑑定をする番組で出たことあるんですけど
16:43石鑑定大会って自然石のコレクターっていう
16:48自分が1000万円すると思った石が結局無価値だった
16:53金銭的にはその鑑定家たちの出した
16:57ある意味答えでは無価値だった
16:59この人会場に捨ててったんですよ
17:011000万だと思ってた石を
17:03だから分かんないんですよ
17:05なんか本当に自由に好きだったわけじゃないですか
17:07その石が
17:08だけどそれがその自分の価値観と客観的なその価値価値でまあ金銭に変えられるっていう数値化みたいなものが一致してくれるとこれは心地よかったしもしかしたら物と心が一体に近づく瞬間なんだけどならないって分かったら自分の方を指定したんですよ
18:30すなわち客観主義は経験によって自明なものとしてあらかじめ与えられている世界を基盤として
18:45その客観的真理を問い
18:48世界がそれ自体において何であるかを問う
18:52これを普遍的に行うのが
18:56学的知能
18:58学的知能
19:00つまりは
19:01哲学の仕事である
19:03これに対して
19:07超越論主義は次のように言う
19:10あらかじめ与えられている生活世界の存在意味は主観的形成体なのであり学問に先立って経験しつつある生の所産なのであるその生のうちで世界の意味とその存在だとうとが構築されるのだ
19:31まあ難しい言葉出てきましたね超越論主義ちょっと山ですね
19:42客観主義っていうのは自然科学者は基本そうなんですけども世界客観的にあるでしょうと
19:48これをちゃんとデータとかを取って調べて世界って客観的にどうなっているのかを調べよう
19:55でも客観主義の立場だけだとさっき言った意味や価値や道徳ねそういうことはよくわけわかんなくなるんであえて主観の側に心ないし主観の側に立って考えようとする
20:09そういう一群の哲学者たちが現れるわけです
20:13だからまあフスタイルとしてはその流れを自分も組んで自分の超越論的現象学と
20:21難しくなってきた
20:23客観主義の方が余計なものをどんどんそぎ落としてた方が真実が見えるんじゃないかみたいなことだったと思うんですね
20:31良かれと思ってできてくる客観主義だと思うんです
20:34そのブレの大きい主観の方を一旦なかったことにしようっていう
20:39だけど一旦で済まなくなってきてそうするとこの何より大事なのはこの僕の今思っていることでしょっていう方が
20:48ちゃんとそれを入れないと世の中を解き明かすことにはなりませんよっていうことですよね
20:55そうですそうです
20:56結局その人間が生きてるっていうのは主観的な体験の場を生きてると
21:03そうすると究極その主観という体験の場の外側がどうなっているかっていうのはこれもう分からないと
21:12だから主観と客観が一致するっていうようなことももう潔く諦めて一致不可能
21:22だから全て心の中で起こっていることっていうふうに考えてみよう
21:28そういうねちょっと常識からすれば逆立ちしたような変な思考実験をするわけです
21:34この思考実験が超越論主義なんですけどね
21:37だからそうするとですね主観から独立して客観的世界があると信じてるのも主観だよね
21:46なるほどなるほどっていうふうにして徹底的に主観で考えて客観的な認識とか価値っていうことをやろうとする
21:56これが超越論的減少学ですね
22:00もともと大事だった主観の方に一回立ち返るといいますか
22:04なんかそういうメッセージを感じるんですけど
22:06はいその通りです
22:07だから客観主義は別に否定しない
22:09実証科学OK科学もOK
22:12でもその科学だって実は主観の中で有用で作り出して
22:17そして共有できる条件を持っているから物理学になって学問になっているんだ
22:22だから主観の側が客観を包んじゃうわけですよね
22:26そういう考え方しようよ
22:28そしたら価値についても全くバラバラっていうんじゃなくて
22:33共有できる部分って見つけられるよ
22:35そうすると人類もこういう方向に最低限向かっていくのがいいんじゃないのっていうところまで行けるんじゃない
22:42そういうことを言いたかった
22:45いやいや面白いし今ちょっと自分たちが身につけなければいけない考え方だと思うんですよね
22:55なんか本当にねその客観主義エビデンス主義が本当に機能してますかっていう自問自答ってすごい大切で
23:05なんとなくこの人の書く文章を信頼していますっていうことが自分が客観の根拠にしているエビデンスになったり
23:14これはかなり主観的に僕は選んでるなっていうことに一度気づくと
23:19一旦ちょっと待てよ逆サイドの人が言ってることって正しいのかなっていうのを
23:27もう一回考え直すこのスイッチを作ってないとあれっていうようなことになるもんね
23:34逆に言えば私はこっちを大事に生きてたからこういうことも取り入れていかなきゃなって思いましたね
23:39なるほど改めて考えるところがありますね
23:41西さん今回もありがとうございました
23:44ありがとうございました
お勧め
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