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教育
トランスクリプション
00:00人生100年時代と言われ超高齢社会となった現代
00:05人が老いることにとことん向き合った本があります
00:09その名も老い
00:12著者はフランスの作家哲学者のシモーヌ・ド・ボーヴォワール
00:18頑張って生き抜けって言ったって無理じゃないですか
00:24100分で名著ボーヴォワールは老いは個人の問題ではなく
00:30社会の問題であると告発します
00:54100分で名著司会の安倍美智子です
01:02伊集院光です
01:03伊集院さん最近年取ったなぁと感じることありますか
01:08例えば白髪を全く染めずに今日出てみたんですけど
01:11この数なんかは年々と増えてますしね
01:14あと記憶力とかも衰えてるかなと
01:17今回の名著はこちらです
01:19老いというタイトルで
01:21人が老いていくことをあらゆる角度から検証した上下感ある本なんですけれども
01:26これを読むと老いに対する態度が変わるかもしれないということで
01:29老いに対する態度
01:31非常に私は期待しています
01:33教えてくださる先生ご紹介します
01:36社会学者の上野千鶴子さんです
01:38どうぞ
01:39よろしくお願いします
01:41よろしくお願いします
01:43社会学者の上野千鶴子さん
01:47女性学のパイオニアとして知られ
01:51女性が性別によって差別されることのない社会を目指し
01:55多くの著書を発表してきました
01:57近年ではお一人様の老後がベストセラーになるなど
02:04高齢者や介護問題にテーマを広げています
02:08ではまず作者のシモーヌド・ボーヴォワールが
02:13どんな人だったのか基本情報から見ていきましょう
02:161908年フランスパリ生まれです
02:19戦後フランスにおいて
02:21ジャンポール・サルトルと並んで
02:23実存主義の思想を掲げて活動した
02:25作家であり哲学者であります
02:27上野さんとこのボーヴォワールとの
02:29最初の出会いというのはどういったものだったんですか
02:32私たちの世代は女の問題に関心があるというと
02:38まずボーヴォワールの大のせ
02:40これは出読文献ですから
02:42他に読むものがないんです
02:44ウーマンリブなんてまだ影も形もない時代ですからね
02:47冒頭にガーンと来るわけでしょ
02:49人は女に生まれるのではない
02:51女になるんだ
02:52人はこうやって生まれた後に
02:55社会的に作り上げられるんだっていう理論をね
02:58こんなに早く先取りしてたんだっていう
03:01今出た第二のせいという本ではなく
03:05この老いを取り上げるというのは上野さんどういう
03:08理由は簡単です
03:09私が老いたからです
03:11ボーヴォワールさんは41歳期に第二のせいを書いて
03:1762歳になって老いを書いて
03:20やっぱりねある種のね当事者研究なんですよね
03:24自分の人生の中で何が大切かっていうことを追っかけていって
03:3060過ぎて老いにたどり着いた
03:32私ももう高齢者でございますので
03:36この年齢の女何考えてんだろうっていうことにとっても興味があります
03:41へえ大変失礼ですがお二人のお年を聞いていいですか
03:45僕53歳です
03:47私43歳ということは初動でいらっしゃる
03:50はいはいはい
03:51ということは自分事としてお互いに語れるということで
03:55そうですね老眼になって老眼鏡をかけたりとかするたびに
04:00ちょっとずつショックを受けたりとかしつつ受け入れてる今最中ですかね
04:04最初抵抗しましたよこの抵抗が何なのかも多分明らかにされるでしょうけども
04:09であの今回取り上げる老いの中で上野さんが衝撃を受けたフレーズがあるんですけれども
04:14それがこちらです
04:16老いは文明のスキャンダル
04:20この言葉がずっとね鳴り響いててね
04:23スキャンダルって日本語に訳すとね
04:27修文それからチブ恥ずかしい部分って訳した方が分かりやすい
04:34私たちの文明の中で見たくない隠しておきたいっていう部分だっていうことを
04:40こんなにズバリ言った人がこの時にいたんだっていうので
04:44それは個人の問題じゃなくって文明の問題なんだっていうのがずっと響いておりましたね
04:50へえ
04:52さあではボーヴォワールの人生をたどりながら老いを読んでいきましょう
04:56朗読は女優の筒井真理子さんです
04:59フランスの作家哲学者のシモーヌ・ド・ボーヴォワールは
05:06老いの序文でこう語っています
05:08人間がその最後の15年ないし20年の間
05:15もはや一個の廃品でしかないという事実は
05:20我々の文明の挫折をはっきりと示している
05:23この人間を既存する体制
05:27これが我々の体制に他ならないのだが
05:30それを告発する者は
05:33この言語道断な事実を
05:37白日のもとに示すべきであろう
05:39ボーヴォワールはフランスパリ生まれ
05:46ソルボンヌ大学の哲学科に進み
05:49そこで生涯のパートナーとなるサルトルと出会います
05:53作家を志し41歳の時
05:58同時代の女性の経験と
06:01膨大な歴史的資料をもとに
06:03第二の生を書きます
06:05生鯖は単に生物学的なものでも
06:10運命でもなく文明
06:13つまり社会によって作られるものだと解き明かし
06:17世界中の女性たちへ大きな影響を与えました
06:21そんなボーヴォワールが
06:2562歳の時に書いたのが老いです
06:28老年期において
06:31人間が一個の人間であり続けるためには
06:35社会はいかなるものであるべきか
06:38すなわち
06:41彼がそれまでの生涯を通じて
06:45常に人間として扱われていたのでなければならない
06:49ということだ
06:50現役で亡くなった高生員をどう処遇するかによって社会はその真の相亡をさらけ出す
06:59当事者じゃないとちょっとこうベンチャラが入ったりとか世間体が入ったりしてくところをまあズバリ切ってきますね
07:08お年寄りがどう扱われているかを見るとその社会が分かるというのはちょっとまあ納得するところはありますよね
07:14そうですね
07:15社会的弱者って言われる人たち女子供年寄り障害者っているんですけどね
07:23その人たちに強くなって頑張って生き抜けって言ったって無理じゃないですか
07:29だからね別に弱い人が弱くて何が悪いのっていうのとすると年寄りはこれからさらにどんどん弱くなっていきますよね
07:40それでいいじゃないかその人たちをどう扱うかっていうのが文明の課題なんだっていうことをね
07:47こんな早い時期にボーヴァールさん言ってくれたんだって本当に感動しました
07:53次にこちらをちょっと見ていきたいんですけれども
07:58子供から大人大人から老人に行きますが
08:01老いへ向かう時の研究は少ないということなんですね
08:05厚労期の研究っていうのがねやっぱりこれまであんまりなかったんですね
08:09私はね老いるっていうのはね老い衰えることだって言い換えてて
08:15だんだん中途障害者になっていく
08:18昨日できたことが今日できなくなり
08:20今日できたことが明日できなくなる
08:23中途障害の方はかつて自分がそうでなかった時のことを記憶しておられるので
08:28その時の自分と今の自分を
08:32もう誰が言うより前に
08:34そうするとできなくなった自分のことを
08:39不甲斐ない情けないって
08:41自分で自分を責めるんですよね
08:44これをね
08:45でね
08:48差別の中で一番きついのは
08:51自己差別ですね
08:52自分で自分を受け入れられないっていうのがね
08:55そうねこんなはずじゃなかったって
08:58つまずくたびに
08:59けがして回復が遅いたびに
09:01タイムが落ちるたびに
09:03でしょ若い時はもっとこんなこと軽々とできたはずなのに
09:07さあでは読み進めていきましょう
09:12ボーヴォワールはなぜ私たちが老いをネガティブに捉えるのか
09:16ある言葉で説明しています
09:17老いは我々を不意に捉える
09:22早くも40歳の時
09:27鏡の前に立ち尽くして
09:30私は40歳なのだ
09:33と自分に向かってつぶやいた時
09:36私は到底信じられなかった
09:42それまで普通に暮らしてきたのに
09:50ある日突然
09:52自分が老いたことに気づく
09:55あるいは気づかされる
09:57そして
09:58愕然とする
10:00まさか
10:02自分が
10:04ボーヴォワールは50歳の時
10:10あるアメリカ人女学生が
10:12じゃあボーヴォワールって
10:14もうババアなのね
10:16と言っていたと聞き
10:18愕然とします
10:19また
10:21ある時
10:22サルトルの友人が
10:24知り合いの母親のことを
10:27年取った夫人
10:28と名指ししたことに
10:30不意をつかれたといいます
10:32自分は彼女のことを
10:35年取った夫人と考えたことはなかったのに
10:38他人のまなざしが
10:40彼女を別のものに変身させた
10:43というのです
10:44誰かに出会いほとんど見分けがつかないのだが相手も面食らった様子でこちらを見ている我々は心の中で思う彼はなんて変わったんだろう私もなんて変わったんだろうと思われているに違いないと
11:11ボーヴォワールは老いは大抵他者の経験としてやってくるといいます
11:19その他者とは自分よりも先に自分の老いを認識する周囲の人々ですが実は自分の中にも自分の老いを指摘する内なる他者がいるこの内なる他者と自分自身との葛藤こそが老いを認識することにつまずかせるというのです
11:4453の僕からするとあるあるみたいな感じですねクラス会行ったらお互いに見つめ合う感じっていうもちろん言いませんけれどもねやっぱり表情なんかで分かっちゃうんですよねなぜ私たちはそういうふうに老いを簡単には受け入れることができないんですか?
12:02あのそのねカテゴリー以降の中でね一番最初に来るのは何といっても肉体の衰えですね日本では昔からね歯目マラオイが最初にこの3点セットで来るっていうんですでマラってお分かりになりますよねちょっとドキッとしまうまさかこの曲で出る言葉だと思わなかったからいいえそちらの方は大丈夫ですか?
12:27こんなこと俺テレビで言ったことないけどもそれは前世紀よりは随分老いを感じることがありますそうですやっぱ実感なさるでしょ最後の最後まで追いついていかないのが心ですよね自分が年寄りだということを自分自身で認めたくない本当は追いついてないんだけど何とかこう無理に封じ込めようとしたりとかまあまあも含めて心理的にとても
12:57やっぱりね若い時に年寄りをこんなふうになったらみじめっていうふうに差別してた気持ちが自分の中にあるからあんな人と一緒にされたくないと思う存在に自分がなってしまったっていうことを認めたくないという抵抗感だと思います。
13:19うわこれが最初におっしゃってたこの社会の問題とかすごくバチッとぶつかるんだけどじゃあこの社会変えたいと思った時にこの気づきを若者に言ったところで聞かなかったっていう善かも持ってるからずっとこの社会を繰り返していくことになりますよね。
13:41なんとか解決の道筋も見つけたいと思っておいますさあボーブワルですけれども老いに対する自己否定的なイメージを古今東西の文献から膨大に集めていますそれを見ていきましょう老人と海で知られ不屈のイメージのある作家ヘミングウェイは
14:11自分が選ぶにせよ運命が我々を強いるにせよ引退して自分の仕事我々をして我々たらしめる仕事を放棄することは墓へ降りることに等しい
14:29引退は死を意味するというのです極めつけは古代ローマの風刺詩人ユヴェナリスボーヴォワールは老いの醜さをユヴェナリス以上に荒々しく叙述したものはなかったとして彼の詩を紹介しています
14:51何という不幸せだろう 長い老いに従わねばならないことか
15:00まず初めには顔の形が変わり 愛しく見分けがつかなくなる
15:09さらにカイキリウスは若者たちは老人が嫌いであると断言
15:17ルキアノスは老人は若い者の嘲笑の対象であると語ります古代ギリシャやローマの作家たちは若者が老人を疎ましく思っている前提で作品を書き監修もそれを喝采したというのです
15:38このように老いは徹底的にネガティブなものとして語られ老人が自己否認する言説が繰り返されてきました
15:50それは個人の内面にも刷り込まれ自分の老いを受け入れられなくするのです特に女性の老いはさらに否定的に描かれるといいますその典型的なものとして童話における老婆の例を挙げます
16:14童話の中で老婆はすでに女性であるというだけでうさんくさいのであるが常に不吉な存在である
16:27彼女が善を行うことがあるとすれば彼女の肉体的外観は実は仮想に過ぎずやがてそれを脱ぎ捨て若さと美しさに輝く妖精として姿を現すのである
16:48老婆は常に不吉な存在であり仮に良い行いをするとしても本当は妖精だったというオチがあり真に善人である老婆は出てこないと指摘しますなぜ老婆はマガマガしく否定的な存在と思われてきたのでしょうかボーヴォワールはこう解き明かします
17:14男性の立場からすれば女性の境外は式場の対象であることなので年を取って見にくくなる時彼女は社会の中に割り当てられた場所を失うのである社会においては女性にとって若さこそが価値だと思われてきたからだというのです
17:43もう本当作家の方なんかでね書けなくなったら自分は終わりだもうこの世に生きてる値打ちがないって思う方たくさんいらっしゃって世の中で一定の価値のある仕事をやってきたと思う方ほどそれを失うともう生きてる甲斐がないと思うようになるんですかね。
18:10でもそういうことでねいつも言うんですけど自分が廃品になってしまうのかポンコツになってしまうのかポンコツってちょっと面白いんですよ
19:50一方ボーヴォワールは女性の老いについて未開社会の例を挙げそれが利点になる場合もあると説明します。
20:05高年期以降女性はもはや性を持たず今期に達していない少女と同類となり少女と同様ある種の食事上のタブーを免除される
20:19月経の着替えが原因で彼女の上に課せられていた諸々の金器は取り外される
20:28彼女は踊りに加わり酒を飲み
20:35たばこを吸い男性と並んで腰を下ろすことができるさらにボーヴォワールは自分が若いと感じているかぎり我々は若いのだと老いを受け入れない人に対してこう言います
21:04そのように言うことは老いという複雑な現実を見過ごすことである私の中で年取っているのは他者すなわち私が他者たちにとってそうであるところのものでありしかもこの他者は私なのだ
21:29ちょっと俺難しかったかな
21:35女性が年を取っていくと楽になるよ解放されるよということもありましたね今
21:40男性からの性的な視線に晒されずに済むようになって楽になったそれでどんどん体重が増えても平気になったっていう人もいらっしゃいますよね
21:51女性差別の完全な裏返しですねもちろんその通りですもちろんその通りです俺がムラムラ来るような女じゃなくなった時点で女終わりだみたいなその考え方だからこそ余計な奴がムラムラしないでくれるようになると楽になるみたいなその通りです健全ではない連鎖なんだけれども事実としてこういうことがありますってことです全くおっしゃる通りですね今回このボーヴォワールって自分が若いと思ってるじゃ若いみたいなそう思いましたね私そう思っていたんで
22:21心の中が若ければ若いと思っていたらそういう人に対してボーヴォワールこう言ってましたよね私の中で年取っているのは他者すなわち私が他者たちにとってそうであるところのものでありしかもこの他者は私なのだこれはだから例えば私が鏡を見た時にあれシミとシワってこれかと思っていやいやいやいやって認めないそのせめぎ合いのことですかね
22:45どちらも自分の中にいるんですよそこにこう亀裂があるわけですよねでも私なんか自分の手を見たらしみじみ思いますもちゃんと老婆の手になったなと思います
22:58私は心が若いから老いてないんだっていうその言い訳みたいことをするのは自己否定です自己否定でしょそういうことですよねいびつな価値観によって始まっちゃって誰が悪いっていうかその社会構造のこの循環が悪いんだけど本当はそれをすり込まれてるわけですよねですよねでやっぱりこうメディアとかねはいはい文化とかは若さ若さって若いってことが最高だってこう持ち上げてきたっていう罪も深いですよね
23:28商売も含めて動き出すとまあ止まらないですからね心が若いうちや若いんだっていうのは若いがいいと思ってるからそう思うとするそういうことですねそうですそうです分かりました今いやーこの後も楽しみですね第2回以降も上野さんありがとうございましたありがとうございました

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