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00:00나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나 나
00:30俺はキノクラゲン、34歳。趣味は一人でキャンプをすること。電車を乗り継ぎ、最後はバスで山に入る。
00:47こういう身一つの気楽さが好きだ。木を、水を、土を。自然を愛している。自然と同じくらい、孤独である自分の生き方を愛している。
01:17テントの設営も終わり。となれば次は、焚火だ。
01:38焚火に向いた、よく乾いた枝を探す。薪はキャンプ場が許すのなら、現地調達するほうが好きだ。なぜって。そのほうが楽しいからだ。
01:53大量、大量。火起こしに今日使うのは、これも現地調達の杉の枯れ葉。
02:06これを、ばらけないようにまとめて、その上から、空気が通るように隙間を開けつつ、細い薪から順に組んでいく。
02:19そしてこれが今回の目玉。
02:22ファイヤースターターだ。
02:26先週買ったばかりで、まだ少し不安なので、ここはほぐした麻紐に助けてもらおう。
02:33さあ、行くぞ。
02:42よしよし。着火しやすい麻紐を使ったのは正解だったな。
02:54火が安定したら、大きくなるように少しずつ薪を足していく。
02:59焚き火が、この夜を全うできるように、育てていくんだ。
03:06ひとりが好きだ。
03:07まちを離れ、自然の中で自由を感じる。
03:13ここには、ひとりでいるという贅沢を咎める者は、誰もいない。
03:14まちを離れ、自然の中で自由を感じる。
03:18ここには、ひとりでいるという贅沢を咎める者は、誰もいない。
03:25ふっ、少し飲みすぎたか。
03:26ひとりが好きだ。
03:27まちを離れ、自然の中で自由を感じる。
03:31まちを離れ、自然の中で自由を感じる。
03:32まちを離れ、自然の中で自由を感じる。
03:33ここには、ひとりでいるという贅沢を咎める者は、誰もいない。
03:38ふっ、少し飲みすぎたか。
03:53静かないい夜だ。
03:57管理人もかえて、キャンプ場に僕は一人。
04:03空は雲がかっているが車の音もなく騒ぎ声もない。俺だけの世界。俺だけの時間。これこそ俺のソロキャンプ。
04:33おい! ちょっと待て!
04:47もともと、あたしもここで予約してたんですけど、道に迷った挙句、途中で川に落ちちゃって、下半身びちょびちょになっちゃいまして、やっとキャンプ場に着いたら、たき火が…という…
05:05本当にすみませんでした!
05:13それで俺の焚火に勝手に当たってたのか?
05:17勝手に…その…はい…
05:25あの! わたし、草の雫といいます!わたし…
05:29興味ねえ。もう十分あったまったろ。さっさと別のとこに自分のテント張るんだな。こいつのせいでたいなしだ。
05:41あの…実はその…テ、テントが…レンツェルの予定だったので…
05:51ど、どうしたらいいですかねえ?
05:59帰れ!
06:00なんでそがんこと言うとですか!
06:02テントもなく一晩過ごすつもりか?
06:05時間通りこなかったらお前が悪いんだ。おとなしく諦めて帰れ!
06:09え、でも!このままじゃただ遭難しに来ただけじゃないですか!
06:14知らねえよ、俺には関係ねえ!
06:17バスだってもうないんですよ!歩いて帰ったらほんとごと遭難しちゃいます!
06:22いいんですか!負けて出ますよ!
06:25なんだよその脅し方は!
06:27ここいつ…自分勝手にも程がある!
06:31人の都合もお構いなしに優しくしてもらって当然の態度!
06:36俺の一番…苦手なタイプの女!
06:41ちょっと!ここで待ってろ!
06:46山の避難小屋みたいなこともあるし、もしかしたらと思ったが…ないよなぁ…
06:48レンタル用の物まとめてる倉庫とかもなさそうだし…
06:51何をやらされてるんだ俺は…
06:58何をやらされてるんだ俺は…
07:07あ、おかえりなさーい!
07:17な、何してんだよ…
07:19いや、やることないんでご飯作ってました…
07:25いや、やることないんで…こいつは…
07:30お詫びと言ってはなんですけど、一緒にご飯にしましょう!
07:34もうできますから!
07:36俺の分もあんのか?
07:39お腹すいてなかったですか?
07:42できました!
07:47ビヤカンチキンです!
07:51こ、これは…
07:53ソロではハードルが高くて手を出せなかった憧れの…
07:57ビヤカンチキン!
08:01キャンプの動画見て、初めてソロキャンプする時はこれだって思ってたんです!
08:06料理にちょっと自信あるんで…
08:09味は間違いないと思いますよ!
08:11はい、どうぞ!
08:14ビヤカンチキン!
08:19ビヤカンチキン!
08:20ビヤカンチキン!
08:22えっ?
08:23勘違いしてねえか。俺は好き好んで世話してるわけじゃねえんだ。パッパとお前には消えてほしいと思ってんだよ。だから。
08:33うん。
08:35うん。
08:37うん。
08:39これが憧れのビアカンチキン。
08:44ビールの力か。柔らかくジューシーな歯ごたえ。
08:50ハーブやニンニクの風味も絶妙だ。
08:55お、お前!何してんだよ!
08:57そんな言い方しなくたっていいじゃないですか!
09:00ああ?
09:04あ、私だって分かってるんです。ご迷惑おかけしてるし、自分が全部悪いって。
09:13でも、悔しいじゃないですか。せっかく来たのに、何もしないまま終わりなんて。そんなの。
09:22うん。
09:23だよ。クソ。
09:30お空真っ黒。
09:35うん。
09:36おじさん、何も言わなくなっちゃった。そんなに邪剣にしなくたっていいのにさ。
09:47いつもお一人なんですか?
09:50す、すみません。別にそれが悪いとかじゃなくて。ただ、そうなのかなって。
10:01あたしは、ソロは初めてなんです。グループキャンプって言うんですかね。
10:08友達とキャンプに行ってから、なんかハマっちゃって。
10:12YouTubeとか見たり、キャンプ道具なんか調べちゃったり。
10:16でも、どうにも周りの温度差というか。あれ、なんか違うのかなって。
10:26別にそれが悪いとかじゃなくて。ただ、これだけは合わなかったのかなって。
10:33でも、不思議なんですよね。みんなで行く必要ないじゃんって。一人で行けばいいじゃんって。
10:41そう思うと、余計ワクワクしてきたんです。
10:49だから、その、おじさんが一人なのも分かるなって話で。
10:57あ、あの…
11:00ひとつ言っておくぞ。お前にソロはまだ早い。
11:05お前をちょっと見てきただけで分かる。無計画で、無鉄砲。
11:11ソロをやるには、知識も、経験も、そして準備も足りない。
11:18ソロキャンプは気楽だが、一人である責任も付きまとう。
11:23その責任を負えない奴に、ソロをやる資格はない。
11:28ご、ごめんなさい。
11:30それが分かったら、今日のところは帰れ。
11:32だが、飯の礼に、ひとつだけ教えてやる。
11:39お…
11:40俺は、お前が来るまで、今日は一人きり、ひとり占めできる…って思ってたんだ。
11:50え?
11:52お…
11:54いいか?覚えとけ。
11:56ソロは、責任も独り占めなら、楽しみも独り占めなんだ。
12:01はぁ!
12:04はぁ!
12:06はぁっ!
12:10はぁっ!
12:12はぁっ!
12:14はぁっ!
12:16はぁっ!
12:18スルカ!
12:19しっとったったでしょ!?
12:20コガンキレイなソロ!
12:22ひとり占めするつもりやったとでしょ!?
12:25晴れるのは予報みたいにわかっただからな。この空が本当は俺だけのものだったのに。
12:37駄目です!
12:39そんなの私が許しません!
12:43な、なんでお前に許してもらわなきゃいけねえんだよ!パンツ丸出しのくせに!
12:49え?
12:56なんだよ。さっきのも俺は悪くねえだろ。
13:00違いますよ。そういえば、あたしおじさんの名前知らないなって思って。
13:06別に名乗る必要ねえだろ。
13:08ま、真夜中に名前も知らない男の人と過ごせって言うんですか?
13:13えったく、キノクラ、キノクラゲン。これでいいか?
13:20ゲンさん、ですね?
13:22なれなれしいな、こいつ。
13:24ゲンさん、あたし。いいこと思いついちゃったんですけど。
13:30さっき、お前にはソロはまだ早いって言ったじゃないですか。
13:34たしかにそうです。今回でよーくわかりました。
13:39まて、なんか嫌な予感がする。
13:42だから、あたしが安心してソロができる日まで、ケンさんについていきます。
13:48だから、俺は一人がいいんだって言ってんだろ。ソロキャンプがやりたいんだよ、俺は。
13:54安心してください。ソロキャンプで。二人で。ソロキャンプで。
14:02二人ソロキャンプ、しましょうげんさん。
14:05キャンプといえば、テントを思い浮かべる方も多いだろう。
14:24テントは耳元で騒ぐ虫の侵入を防いでくれるし、突然の雨や風からも身を守ってくれる。
14:33何より就寝時にこそ、重要性を感じることができるのがテントである。
14:40一般的に標高が100メートル上がるごとに、0.6度気温が下がると言われている。
14:50さらに風速1メートルにつき、体感温度は一度低く感じられるとされる。
14:57テントもなく、一夜を過ごすことがいかに寒いかお分かりであろう。
15:02さ、寒い。ちくしょう。
15:06なんであんな女のためにこんな思いを。
15:11帰れ!
15:12帰りません!
15:14二人ソロキャンプ認めてくれるまで帰らんけんね!
15:17ふざけんな!そんな訳のわかんねえもん認めるわけねえだろ!
15:22ふんふん。
15:24往生際が悪いですよ、師匠。
15:26パンツ見たこと人に言いますよ。
15:29それはお前が勝手に出したんだろ。
15:32そんな言い方。
15:34あたし、認めてくれるまでここから動きませんから。
15:38第一、どうやって一晩過ごすつもりなんだ。テントもねえんじゃ今日は帰らざるを。
15:43別に。一晩ぐらい寝ずに過ごしますよ。
15:46あ。
15:48そうやって脅してうやむやにする気ですね。そうはいきませんよ。
15:52馬鹿言うな!
15:54山のキャンプ場をなめるな!
15:59どうしても帰らねえつんなら、俺のテントで寝ろ。
16:03って、アホか俺は。何もかんもあの女のせいだってのに。全部台無しだ。
16:20わあ、寒う。
16:24えっ、ここで寝てたんだ。
16:28俺のテントで寝ろ。
16:30うっ。
16:33うっ。
16:35悪いことしちゃったかなぁ。
16:42ありがとうございます、けんさん。
16:44もう少し寝ててください。
16:46なんだ、やっと起きたのか。
17:01キャンプの朝は早いって言ったろ?
17:04もう飯できてるから、あったかいうちに食い。
17:08ほら。
17:10ありがとう、父さん。
17:14父さん?
17:16間違えるならせめてお母さんじゃないですか?
17:19えっ?
17:20あっ!
17:21あっ!
17:22大丈夫ですか?
17:24おはようございます、けんさん。
17:28く、草の雫。
17:30えっ?名前覚えててくれたんですね。
17:34嬉しいなぁ。
17:35いや、別にだな。
17:39けんさんが寝てる間に朝ごはん作ってたんです。
17:43バジルを振りかけて。
17:45コンビニの材料で作った、あさりのトマトリゾットです。
17:48これ、俺のシェラカップじゃねえか。
17:54お前、人の部屋を勝手に。
17:57だって、自分の分の食器しか持ってきてないですもん。
18:01器の小さいこと言ってないで、温かいうちに食べてください。
18:05器とかそういう問題じゃ。
18:08まあ、いいや。
18:09お口にあったみたいですね。
18:31まあ、まあだ。
18:32しっかしお前、飯だけはちゃんと用意してきてるのな。
18:40えへへ。昔から料理が好きなんです。
18:43だからキャンプに行くならって、そればっかり準備するのに夢中になっちゃって。
18:48あはは、おかしいですよね。
18:51それで他のこと全然できてないし。
18:54ご飯作るなら、別にキャンプでなくたっていいのに。
18:58他ができてないのはまずいな。
19:02別に、料理にこだわるのはおかしいことじゃねえ。
19:06どこで食うかだって、結構大事なことだよ。
19:10あ、そうなんですよね。
19:12昨日も思ったんですけど、家より準備が多くても苦労した分おいしいというか。
19:18空の下で食べると不思議と格別の少し方。
19:21余計なこと言っちまった。
19:23寝ぼけてるのか、口が緩くなったな。
19:25おいしいみたいな。
19:39ず、ずるか。一人でコーヒー飲んで。
19:44もう忙しい奴だな。やるからチッタジッとしてろ。
19:48おいしい。
19:55ふぅ。
19:58家で飲むより香りもいいし、味も何度か体にしみる感じ。
20:04空気が綺麗だからかな。
20:06うーん。
20:14街中と違って静かだと思ってたけど、こうしてるとわかる。
20:21とても気持ちいい。自然のオーケストラ。
20:25これが、ゲンさんの世界なんだ。
20:31やっと静かになりやがったか。
20:35また、絶対遊びに来ます。
20:38今度はもう迷わないので。
20:41ありがとうございました。
20:42ゲンさん。
20:45ちょ、ちょっと。ちょっと待ってくださいよ。
20:49ゲンさん。ゲンさん。
20:55なんだよ。とっとと帰れよ。
20:58私もこっちのバスですもん。
21:00で、二人ソロキャンプのことなんですけど。
21:03お前、まだ諦めてなかったのかよ。行かねえって言ってんだろ。
21:07ダメです。
21:08行かねえって。
21:10ダメです。
21:11行かねえって。
21:12ダメ。
21:13行かねえ。
21:14何がそんなに嫌なんですか。
21:20な、なんだっていいだろ。
21:24分かりました。私も鬼じゃないですからね。
21:29ようやく分かってくれたかよ。
21:32バスが来るから行くぞ。
21:34まずは一回。
21:35ああ。
21:37とりあえず、まずは一回だけ一緒にやりませんか。
21:40はあ。だから俺は。
21:43いいんですか。
21:44あたし、ゲンさんが来なかったら一人でキャンプしますよ。
21:48やりゃあ、いいじゃねえか。
21:50それでまた失敗して、事故とかになったらあたし化けて出ますよ。
21:54だから、なんだよその脅し。
21:56さあ、観念してあたしと、二人ソロキャンプ、してください。
22:02ゲンさん。
22:03えへへ。
22:04思えばこれが、俺と、あたしの、二人ソロキャンプの最低な始まり方だった。
22:16ねむれない夜の隙間に落ちないように
22:29早速、あたしのつもりは、一人ソロキャンプの最高の瞬間が、一人ソロキャンプの最高の高の高さを見ることがある。
22:39雪の揺れる音や一面の星空や
22:48冬煙の向こう側に何かがあると
22:57手を伸ばそうと明かりは遠くこの夜の向こうにたどり着いたり
23:27あたし草の雫
23:40正式にゲンさんとソロキャンプ修行に行ってきます
23:44第2話ソロを楽しめ