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教育トランスクリプション
00:00今世界では人間同士の信頼が損なわれることが起きています
00:13歴史を学ぶというのは過去の事実をたくさん覚えるのではなく
00:21どのように物事が変化するかを研究することです
00:30混沌の時代に入っています就任からおよそ4か月予測不能な言動で世界を翻弄するアメリカトランプ大統領掲げるのはアメリカファースト
00:59政策の一つとして各国への相互関税を発表しました
01:04先行きの見通しが立たない中世界は混乱に陥っています
01:14全世界で2500万部のベストセラーサピエンス全史を生み出した歴史家のユバルノア・ハラリさん
01:34数々の著作を生み出し歴史的な視点から現代社会を読み解いてきた地の巨人です
01:46トランプ大統領は昔の帝国主義のように国際関係を見ていることは明らかです
01:56これまでの秩序を攻撃するだけで新しくより良い秩序については重要なビジョンを持っていません
02:06トランプ時代世界はどうなっていくのか
02:14歴史的な視点から切り込むハラリさんに話を聞きました
02:22ご視聴ありがとうございました
02:52世界中がハラリさんの発言に注目しています
02:56ハラリさんは去年11月以降2回にわたり私たちのインタビューに答えました
03:22理想的には世界最強の国であるアメリカが指導的な役割を担い
03:45リーダーとして人類を一つにまとめるよう努めるべきです
03:51残念ながらトランプ政権はまさにその逆のことを行っています
03:57人類は今大きな共通の課題に直面しています
04:02環境問題や気候変動があり
04:05その一方で世界戦争や核戦争の脅威もあります
04:10今こそ人類は共通の利益のために団結する必要がある
04:16しかし私たちが目にしているのは
04:19国と国の間に分裂と不信感が広がっていることです
04:254月世界各国に相互関税を発表したトランプ大統領
04:39他にも自動車や鉄鋼アルミニウムなどに次々と関税をかけ
04:47世界に激震が走っています
04:49金融市場は一時大混乱に陥り
04:59アメリカを震源とした世界同時株安に
05:03先行きの不透明感は加速し
05:07企業活動にも影響が出始めています
05:13先を見通すというのはまだ現代から難しいと思います
05:16日々目まぐるしく変わるということには
05:20トランプ大統領が進めるのが
05:26世界各国との取り引きディールです
05:30各国は我先にとアメリカとの交渉に乗り出しています
05:48そして中国はアメリカと協議を始めたものの
05:55国の威信をかけた戦いを続けています
05:594月
06:17中国国営の新華社通信が製作公開した動画です
06:23ロボットタリフはアメリカの利益を守るために
06:29輸入品に関税を課すよう指示されます
06:31しかしアメリカ国内で起きたのは
06:36失業率や生活コストの上昇
06:40アメリカの利益を守れなかったタリフが
06:44最後に自爆するという皮肉が描かれています
06:48トランプ大統領のような政治家は
07:03自国の利益だけを考え
07:06自国を全ての国から隔離された
07:09一種の要塞として創造しています
07:12ですから貿易や思想
07:15人に対して壁を築いているのです
07:18問題はこうした要塞同士で
07:21紛争を解決できるかです
07:23国の要塞化が進んだ先に
07:30世界はどうなるのか
07:32ハラリさんは歴史からひもときます
07:371920年代
07:42第一次世界大戦後の特需や
07:45自動車産業の成長などで
07:47経済的繁栄の時代を迎えていたアメリカ
07:51しかし1929年
07:57そのバブルが崩壊し
07:59世界恐慌に突入します
08:01時の大統領フーバー氏が制定したのが
08:09スムートホーリー法
08:11国内産業を保護するため
08:18輸入品に対して交換税を課す法律でした
08:22欧州各国も報復措置を実施して
08:28経済のブロック化が加速
08:30世界経済は急激に縮小しました
08:35そんな中追い詰められたのが
08:40日本やドイツ
08:42対外的な傍聴政策を掲げる政権が
08:52国民の支持を集めました
08:55関税政策という国の要塞化は
09:03結果として第二次世界大戦の引き金となったのです
09:07私たちは1930年代と同じ状況ではありません
09:18違いはたくさんあります
09:20しかしそれでも貿易戦争は
09:23国家間の関係を悪化させ
09:26信頼を損ない
09:27最終的には戦争につながる可能性があるという
09:31基本原則は変わりません
09:33全ての要塞は近隣諸国を犠牲にして
09:38より多くの領土、安全、繁栄を望むことを避けられません
09:432つの要塞が衝突した場合
09:46国際法も普遍的な価値観もないので
09:50戦争以外に要塞同士の関係を調整する方法はないのです
09:57ウクライナ侵攻を続けるロシアも
10:20要塞化した国の一つです
10:23ウクライナ東部南部の4州の一方的な併合を宣言し
10:30犠牲を厭わず侵攻するロシア
10:344月以降2回短期間の停戦を宣言したものの実際には攻撃を続けています
10:45ロシアの野心は目的を達成するまで止まらないとハラリさんは見ています
11:01ウクライナ戦争は2022年に始まったと言われていますが
11:10実際にはロシアは2014年にウクライナに侵攻しました
11:16ロシアはクリミアを征服し
11:192014年から2022年まで
11:22断続的に戦闘が続きました
11:25休戦協定はロシアによって全て破棄されたことを覚えておくことが
11:32非常に重要です
11:34もし今協定によって戦闘が停止したとしても
11:392、3年後に再び侵攻しないという保証はないということです
11:45そして就任前から和平交渉に意欲を見せてきたトランプ大統領
11:55しかしゼレンスキー大統領とは口論に
12:114月にはロシアに有利な和平案を
12:32関係国に提示したとも報じられています
12:35トランプ大統領がウクライナに戦争の責任を負わせたのを聞きましたが
12:44理解できませんでした
12:45どうして彼はロシアの侵攻をウクライナのせいにできるのか
12:50しかし彼の世界観では
12:53強い者が支配し
12:55弱い者は強い者に従わなければなりません
12:58争いは弱者の責任だとトランプ大統領は考えるのです
13:04すべての国がこの世界観を極めて危険だと感じている
13:10それが問題なのです
13:12ハラリさんが危惧するのは
13:18各国の要塞化がこれまで培われてきた国際秩序を崩壊させることです
13:251945年以来
13:31国際システムの基本原則は
13:34強国が弱国を侵略し征服できないというものだったはずです
13:41ここ数十年で発展した自由主義の秩序は
13:45多くの問題を抱えながらも
13:48人類史上最も平和で繁栄した時代を生み出したのです
13:53各国は外部からの侵略に関して
13:59以前より安全だと感じたため
14:01軍事予算を減らし
14:04教育・医療・福祉の予算を増やしました
14:07世界全体の平均軍事費は
14:11予算のおよそ6%から7%に低下し
14:16一方で医療費の平均支出は10%に達しました
14:21こうした状況は今
14:25ロシアによるウクライナ侵攻
14:27中東やその他の地域でのさらなる戦争勃発
14:31トランプ政権の新たな国際ビジョンによって
14:36変わりつつあります
14:37世界各国が予算や資源を
14:43医療や教育から競って軍隊の強化に移せば
14:47戦争の可能性は高まるばかりです
14:51今トランプ大統領のように
14:59自国第一主義を掲げる政治家が
15:02世界中で勢力を拡大
15:06既存の体制を批判し移民の受け入れに反対する
15:29このポピュリズムが人々の支持を集めています
15:32このポピュリズムについて
15:53ハラリさんは最新の著作の中で分析しています
15:57ポピュリズムという言葉は
16:05人民を意味するラテン語のポプルスに由来する
16:10ポピュリストが行う最も斬新な主張は
16:17彼らだけが真に人民を代表しているというものだ
16:25そして人々の支持を集める理由について
16:34独自の視点で切り込みます
16:36彼らは全ての人間関係は
16:44権力闘争であると考えています
16:48裁判所であれ
16:51メディアであれ
16:53大学や科学機関であれ
16:56これらは権力を獲得するための
17:01単なる陰謀であると想像します
17:03陰謀論の主な特徴は
17:07現実を過度に単純化していることです
17:12単純化したストーリーは
17:19時に暴走することがあると
17:21ハラリさんは歴史上のある悲劇から説明しました
17:26ドイツのバンベルク
17:3117世紀
17:37人口のおよそ10人に1人
17:391000人が処刑される出来事がありました
17:43中世から近世にかけて
18:04ヨーロッパ全体に広がった魔女狩り
18:08魔法を使うなどという偽情報によって人々が拷問され
18:16およそ10万人が処刑されたといわれています
18:20魔女の正体を暴いて殺すためのガイドブックとして
18:32魔女への鉄椎は当時のベストセラーとなりました
18:36ハラリさんは
18:41陰謀論のような単純な物語が
18:44人々を引きつけやすいと指摘します
18:47魔女への鉄椎では
18:53悪魔による世界規模の陰謀について書かれています
18:57何十万もの魔女が世界中に散らばって
19:03子供を殺しているなど
19:05様々なとんでもない話があります
19:08それは今日でもSNS上で見かけるような話です
19:15真実はしばしば苦痛を伴います
19:19自分自身あるいは
19:22自国について知りたくないこともたくさんあります
19:26それに対してフィクションは
19:30好きなように心地よいものに作ることができます
19:34つまりコストがかかり
19:37複雑で苦痛を伴う真実と
19:40安上がりで単純で
19:43心地よいフィクションとの競争では
19:45フィクションが勝つ傾向にあるのです
19:49過激な言動や
19:55不確かな情報が支持される理由を
19:58こう分析しています
19:59一言で言えば
20:09ポピュリズムは
20:11情報を武器と見ているのだ
20:14極端なポピュリズムは
20:20客観的な真実などというものは
20:23全く存在せず
20:26誰もがその人独自の真実を持っていると断定する
20:33人々はその真実を使って
20:40競争相手たちを倒す
20:443月9年ぶりに日本を訪れたハラリさん
20:57滞在中都内の2つの大学で講演を行い
21:05学生たちとも対話しました
21:07フェイクニュースのようなフィクションと
21:12維持されるべき社会の安定化に寄与するような
21:16フィクションの区別というのは
21:18いかにできるというふうに
21:20おられるかお聞かせください
21:23言論の自由は人間に与えられている
21:28それは人権であり
21:30保護されるべき非常に重要な人権です
21:33何かを発信する前にそれが真実であり
21:38憎しみに満ちた嘘ではないことを確認するのは
21:41ソーシャルメディア企業の仕事です
21:44さらにハラリさんは
21:49トランプ時代に心配している
21:51あることについて語り出しました
21:54AIは本当にこれまでにない脅威なので
22:00危険を把握するのが難しいのです
22:03最も明白なのは
22:06進歩が非常に早いことです
22:09ハラリさんの言うAIの脅威とは何なのか
22:17大量の情報を一瞬で処理したり
22:24精巧な画像を生成できたりするAIは
22:27爆発的な勢いで利用が広がっています
22:31こちらはローマカトリック教会の
22:38フランシスコ教皇が死去した後
22:41トランプ大統領がSNSに投稿した画像です
22:45バイデン政権で作られたAIの開発規制
23:00トランプ大統領は就任直後規制の緩和に動きました
23:06ハラリさんが懸念するのは
23:12AIの開発競争が進んだ先に
23:16政治システムの在り方が変わる可能性です
23:1921世紀の大きな問題は
23:26私たちが開発している新しいテクノロジー
23:29SNSやAIのようなものが
23:33民主主義と全体主義
23:35どちらに味方するのかということです
23:39私たちは民主主義と全体主義を
23:45倫理観やイデオロギーの違いとして考えがちです
23:49しかし実際には
23:51情報の流れ方の違いです
23:55ハラリさんによれば
24:01民主主義体制は
24:03情報を国民の間で自由に流通させる分散型
24:08チェック機能が働き
24:12不正や権力の集中を防ぐことを可能にしています
24:16一方、全体主義体制は
24:22情報が中央に向かって流れる中央集権型
24:26中央の権力が全ての情報を統制することを目指し
24:33自由な情報の流れを規制します
24:41全体主義体制の権力者が
24:43歴史的に実現できなかったことを
24:46AIが可能にすると
24:48ハラリさんは指摘します
24:5020世紀には
24:56全体主義は民主主義よりも効率が悪く
25:00うまくいきませんでした
25:01ソ連のように
25:04全ての情報を一極に集中させても
25:08中心にいる人物が
25:11膨大な情報を処理して
25:13適切な判断を下すことができなかった
25:16からです
25:17おそらく21世紀は
25:20状況が異なっているでしょう
25:23AIが台頭しているからです
25:26AIは人間よりも
25:29はるかに効率的に処理できます
25:3221世紀には
25:35AIが全体主義を
25:37もっとうまく機能させるかもしれません
25:41さらにハラリさんは
25:47新たなテクノロジーである
25:49AI開発競争の行く末に
25:52警鐘を鳴らします
25:5319世紀に産業革命が起こり
26:01最初に工業化した少数の国が
26:04絶大な力を得て
26:06これらの国がほぼ全世界を征服し
26:10支配した時と似ています
26:12AIでも同じことが起こる可能性があります
26:16AIの力は
26:19蒸気機関や列車
26:20機関銃といった
26:2219世紀の技術よりも
26:24はるかに強力です
26:26少数の国が
26:29AI技術を独占すれば
26:32軍事的
26:32経済的に大きな優位性を持つようになり
26:36地球全体を支配することが
26:39できるようになります
26:40今世界は自国の利益を最優先にして
26:55再び分断の道を進もうとしています
26:59混沌とするトランプ時代
27:04どう乗り越えればいいのか
27:09ハラリさんは
27:13私たちはすでに答えを持っていると
27:17教えてくれました
27:18人類の長い歴史から学ぶべきことは
27:27信頼を築くという
27:29人間の驚くべき能力です
27:3210万年前人類は
27:35数十人の小さな集団で暮らし
27:38外の人間を信頼できませんでした
27:42今日では数百万人が
27:46互いに信頼し合う
27:48国家のような巨大なネットワークが
27:50構築されています
27:51過去には多くの戦争や犯罪などの
27:56問題があったにもかかわらず
27:59互いによりよく信頼を築く方法を学んできたのです
28:03最も重要なのは
28:06自己修正メカニズムです
28:09誰もが小さい頃
28:12歩き方を学ぶやり方です
28:14自分にも知らないことがある
28:17間違いを犯すこともある
28:20と認める能力です
28:22それは他者を修正するものではありません
28:28他者の問題を指摘するのは簡単です
28:32自分の間違いを修正できる能力なのです
28:36最終的には全て人間同士の信頼にかかっているのです
28:43今後の年月に
28:59人々がどのような決定を下すかは
29:03私には予測できないが
29:05歴史家として
29:09変化の可能性があるとは考えている
29:13古いものもみな
29:18かつては新しかった
29:21歴史で唯一普遍なのは
29:29変化なのだ
29:43歴史の世界に立ち上げるものもみなり
29:55感染しました
29:57ありがとうございました