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00:00今年の夏は日本各地でこれまでにない厳しい暑さが続いています
00:216月の平均気温は観測史上最も高い状況となりました
00:267月になってからも40度を超える気温を観測する地点が全国各地で相次ぎました
00:34日々の生活の中でも多くの人がこの厳しい暑さを実感しているのではないでしょうか
00:41こうした暑さの背景には気候変動の影響があると考えられています
00:49今日は気候変動と健康や医療との関連についてお話ししたいと思います
00:55まずは気候変動がこれまでどのように進んできたのか
01:01そしてこれからどうなっていくのかを見てみましょう
01:04国連の気候変動に関する政府間パネルIPCCの報告によると
01:13世界の平均気温は産業革命以前と比べてすでに1.1度上がっています
01:19これは人類が経験したことのないレベルの温暖化です
01:242024年には1.55度まで上昇したという報告もあります
01:31そしてこの温暖化の主な原因は
01:35人間の活動によるものであると科学的に断言されています
01:40日本でも気温の上昇は明らかです
01:45ここ100年で年平均気温はおよそ1.4度上がっています
01:51特に1990年代以降は暑い年が繰り返し起きています
01:57これから先気温がどうなるのでしょうか
02:01国際社会では1.5度の目標を掲げています
02:07つまり産業革命前からの気温上昇を
02:11今世紀中に1.5度未満に抑えようというものです
02:15そのためには温室効果ガスの排出を
02:202050年頃までに実質ゼロにしなければなりません
02:24次に暑さが私たちの健康に
02:29どんな影響を与えるのか見てみましょう
02:31世界では暑い日に晒される高齢者の数が
02:38年々増えています
02:3965歳以上の方が熱波に晒される日数は
02:442010年頃から特に増加し
02:472023年には延べ100億人日を超えたと推定されています
02:55日本でも熱中症で救急搬送される人が増えています
02:59最近5年間では毎年平均して
03:03約7万5千人が熱中症で搬送されており
03:07亡くなる方も増加傾向です
03:09毎年およそ1300人が熱中症で亡くなっており
03:14その約8割は高齢者です
03:17自然災害による死亡者数と比べてみると
03:22熱中症による死者数は5.5倍にもなります
03:25つまり、暑さや熱波も自然災害として考える必要があるということです
03:32さらに、実際に暑さが原因で亡くなる人は
03:38熱中症として記録されている死者数よりも
03:41ずっと多いことが分かってきています
03:43暑さが引き金になって亡くなる方は
03:47熱中症の死者の約7倍に上ると推定されています
03:51特に注意が必要なのは、心臓や呼吸器、腎臓などに
03:57持病がある方です
03:58暑さによって体温が上がると
04:01体は皮膚表面に近い血管に血流を増やして
04:04熱を逃がそうとしますが
04:06この時、心臓には大きな負担がかかります
04:09また、汗をかくことで循環する血液の量が減り
04:15呼吸器に疾患がある方は
04:17呼吸器の状態が悪くなることがあります
04:19腎臓の機能が低下している方では
04:24脱水によって腎臓への血流が減り
04:27腸体が悪化することがあります
04:28このように、心臓や呼吸器、腎臓などに
04:33持病がある方が、暑さによって
04:35体調を悪化させて命を落とすケースでは
04:37必ずしも熱中症で亡くなったと
04:40診断されていない場合が多いと考えられます
04:42将来、こうした暑さによる影響は
04:46さらに大きくなると予測されています
04:48今世紀末、つまり2090年代には
04:53暑さによる死亡者数は
04:55人口あたりで2010年代の2倍以上になると
04:58見込まれています
04:59暑さ以外にも、気候変動は
05:04さまざまな病気に関わっています
05:05例えば、蚊が媒介する感染症です
05:10気温が上がることで
05:12デング熱の原因となるデングウイルスを運ぶ化が
05:15より広い地域に住めるようになり
05:18感染のリスクが広がります
05:19また、花粉症などのアレルギーも
05:24気温の変化や植物の開花時期の変化によって
05:28影響を受けると考えられています
05:30さらに、大雨や洪水の増加により
05:35水を通じて広がる病気のリスクも高まる可能性があります
05:38極端な気象、例えば干ばつや洪水などが起きると
05:43食料不足が起きて
05:45特に子どもたちの栄養不足や
05:48下痢症のリスクが心配されます
05:50また、災害後の心の健康への影響も見逃せません
05:56世界保健機関WHOの予測によると
06:012030年から2050年の間に
06:05気候変動による死亡者数は
06:07年間およそ25万人に上ると見込まれています
06:10特に栄養不良、マラリア、下痢症、熱中症による死亡が多く
06:17小さな子どもと高齢者が最も影響を受けやすいとされています
06:22日本でも環境省の専門委員会が
06:27影響の重大性や緊急性を評価しています
06:31その中では、熱中症や暑さによる死亡は
06:35重大な影響をもたらすとされ
06:38デング熱などの感染症も警戒が必要とされています
06:44こうした影響に対して
06:46私たちはどう対応していけばよいのでしょうか
06:49対策には2つの柱があります
06:52緩和策と適応策です
06:55緩和策とは、温暖化そのものを食い止めるための取り組みです
07:00つまり、温室効果ガスの排出を減らすことです
07:05一方、適応策とは
07:07すでに進んでしまっている温暖化に対して
07:10社会や私たちの暮らし方を変えていくことで
07:13被害を防止、軽減する対策です
07:16暑さなどの影響を最小限に抑える工夫ともいえます
07:22例えば、日本では
07:242021年に熱中症対策行動計画が策定されました
07:292023年には
07:32熱中症による死亡を半減させるという
07:35中期目標が掲げられ
07:38環境省と気象庁による熱中症警戒アラートが
07:42全国で導入されています
07:43また、暑い日に誰でも入れるクーリングシェルター
07:49つまり、冷房のある公共施設などの活用も始まっています
07:53一例ですが
07:57私が関わる医療の現場も
08:00気候変動とは無関係ではありません
08:02実は、世界全体の温室効果ガスのうち
08:06医療関連の排出は
08:08平均して5%程度を占めています
08:11日本では6.4%というデータもあります
08:16これは、医療のためのエネルギー使用だけでなく
08:20医療資材の製造や輸送、廃棄物の処理など
08:25医療のあらゆる活動が関わっています
08:28イギリスでは、国の医療機関NHSが
08:342040年までに温室効果ガスの排出をゼロにするという目標を立て
08:40具体的な行動計画も策定しています
08:43日本でも、日本医学会が2023年に
08:49未来への提言として
08:50温暖化対策と医療の取り組みを
08:53社会全体で進めていく必要があると提言しています
08:57今日お話ししたように
09:00気候変動はすでに私たちの健康や命に影響を与えています
09:05暑さの問題は熱中症だけではなく
09:08より広い健康被害につながっています
09:11そして、気候変動に対応するには
09:14温暖化を防ぐ努力、緩和策と
09:17すでに起こっている変化に備える工夫、適応策を
09:20両方進めていく必要があります
09:22医療の現場でも
09:24温室効果ガスの排出を減らす努力が求められています
09:28健康を守ることが環境を守ることにもつながる
09:32そんな一挙両得の取り組みが
09:35これからますます大切になっていくと思います
09:38ご視聴ありがとうございました

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