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  • 2025/6/30

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ショート
トランスクリプション
00:00明治時代、加納寺五郎によって生み出された柔道
00:08心身の鍛錬による人間形成が最大の目的とされました
00:13しかし戦後、柔道がオリンピック競技となり国際ルールが浸透すると
00:21試合で勝つことを重要視する風潮が強まります
00:30これに対し批判的な意見も聞かれるようになりました
00:33勝敗にこだわるあまり、人作りとしての柔道の本質を失っているのではないか
00:40勝ち負けよりも人作りだと
00:46どちらも大事だって考え方ができませんかね
00:51どっちかっていう人もいるかもしれないけど、どっちも大事なんだ
00:55柔らの道、第4回はスポーツとしての国際化が進む中で
01:03本来の柔道精神はどう受け継がれようとしているのかを見つめます
01:08ご視聴ありがとうございました
01:38東京千代田区にある日本武道館です
01:42昭和39年、東京オリンピックで正式種目となった柔道
01:48その柔道の競技の開催に合わせて建設されました
01:52スポーツライターの玉木正幸さんは
02:02東京オリンピックの当時、小学6年生でした
02:05武道館で行われた柔道の試合を
02:09テレビで興奮しながら観戦したといいます
02:12強烈に覚えてますね
02:18この武道館で東京オリンピックの柔道が行われた
02:23中でもやはり無差別級
02:26ヘイシンク対神永の戦いというのは
02:30今でも目に焼き付いてます
02:32柔道競技の最終日
02:36体重無差別でオランダのヘイシンクが
02:39日本人選手を次々と破り優勝しました
02:43玉木さんはこの試合を通して
02:52柔道の国際化だけでなく
02:55柔道が勝敗を競うスポーツだという認識が
02:58多くの日本人の間に広まったと考えています
03:02私自身柔道をスポーツとして見始めたのがきっかけですし
03:10やっぱり自分の気持ちの中にも
03:13日本人として自分を完成するために柔道をしているんだとか
03:19そういう目では全く見てなかったですね
03:21やはり勝ち負けが中心
03:24金メダルやっぱり欲しいよね
03:26応援していても勝って欲しいよね
03:29という勝ち負けが一番大きな問題としてあったと思いますね
03:33明治15年
03:38加納寺五郎が創始した柔道には
03:40当初明確な試合のルールがありませんでした
03:44ようやく明治33年になって作られた
03:52高道館の試合のルールです
03:55投げ技固め技による一本だけが勝利の条件とされています
04:02例えば投げ技では相当の勢いを持って
04:10相手を仰向けに倒すことが一本とされました
04:14はっきりとした実力の差がない場合は
04:21勝敗をつけませんでした
04:22加納は試合で最も大切なのは
04:31相手に勝つことではないと考えていました
04:34試合はあくまで修行の一方便であり
04:39修行の童貞において
04:41どれほどまで己の力が進んだかを試みる場所である
04:46しかし戦後
04:54柔道は勝敗を重視する競技家の道を歩み始めます
04:58それを決定づけたのが
05:00昭和39年の東京オリンピックでした
05:04スポーツの祭典であるオリンピックに
05:09柔道が正式な競技種目として採用されました
05:13これは柔道が近代的なスポーツとして認識されたことを意味しました
05:19昭和42年
05:28スポーツとしての柔道の普及を目指し
05:31国際柔道連盟は基準となる国際ルールを作りました
05:35その後オリンピックなどの国際大会に適応される中で
05:40整備されていきます
05:42一本に満たないものを技あり
05:49技ありには満たないものを有効
05:52さらに有効に満たないものを効果と定めました
06:03国際ルールでの試合です
06:04相手を仰向けに倒さない技に対しても
06:08効果が認められました
06:09こうしたわずかなポイント差で
06:13勝敗が決められるようになったのです
06:15スポーツをやっている人
06:21特にスポーツとしての柔道をやっている人が
06:24金メダルを目指す
06:26そして国際試合で勝ちたいと思うならば
06:29そのルールに則ったやり方をするというのは
06:31これはもう必然的なもので
06:34そのこと自体を批判することはできないと思うんですね
06:37私は金メダルはどうでもいいから
06:39本当の柔道をするんだと言って
06:42結果的に負けていくと
06:45そういう人の主張というのは通らないと思うんですね
06:48ですからただ見ている人とのギャップ
06:53またやっている人も心の中で
06:56ちょっと違うんじゃないかと思いながらやっているという
06:59そのフラストレーションのようなものは
07:01どんどん大きくなったように思います
07:03競技スポーツとして柔道が発展する中で
07:12ルールに触れないギリギリのところで
07:15勝つことを追求する風潮も生まれます
07:17例えば柔道着の襟は
07:24左を上にする習わしがあるのに対し
07:26右を上に重ねる選手が現れました
07:29対戦相手は不慣れな組手を強いられ
07:35技をかけにくくなります
07:37さらに不正な柔道着を着用する選手まで現れました
07:49相手がつかみにくいように
07:52襟の生地を何枚も重ね合わせて
07:54襟自体を固くするというものでした
08:04こうした行き過ぎた勝利市場主義は
08:06本来の柔道の精神に反するという批判が
08:10盛んに聞かれるようになります
08:12その一方
08:17競技スポーツ家の流れの中にあって
08:20柔道の精神を体現した柔道家がいました
08:23山下康博さんです
08:30山下さんはポイント重視になったルールの下でも
08:34一本にこだわる柔道で
08:36勝利を重ねました
08:38海外の選手には負け知らず
08:42国内外の試合合わせて203連勝のうち
08:45一本勝ちは176試合という
08:49輝かしい成績を残しました
08:51柔道の精神が失われているという批判に対し
09:05山下さんは競技スポーツ家によって
09:08柔道の本質が失われることはないといいます
09:11そういうところにもそれ以上の親しみを感じているんです
09:14皆さん意外に思われるかもしれませんけども
09:19私が柔道をやった時に
09:21武道としてやったのかスポーツとしてやったのかといわれたら
09:26スポーツとしてやったと
09:27間違いないです
09:29そして多くの柔道関係者は
09:33柔道をスポーツとしてやっています
09:36オリンピック種目になって
09:40アジア大会の種目でもあり
09:42イニバーシャル種目でもあり
09:43どちらかというと
09:45武道の中では一つだけ柔道は
09:47他のスポーツとの交流が盛んなんです
09:49ですからそこに武道という国で集まっているというよりも
09:56そういった他のサッカーだとか
09:59バレーボールドラクビーとか陸上とか
10:01そういうところにも
10:02それ以上の親しみを感じているんです
10:04山下さんと柔道の出会いは小学生の時でした
10:12当時ガキ大将だった山下さんは
10:16同級生に腕力を振るい
10:17自分の強さを盛んに誇示したといいます
10:20しかし柔道に出会ったことで
10:31山下さんに変化が起こります
10:33柔道の技術を懸命に学ぶ中で
10:37知らず知らずのうちに
10:39平常心が培われていきました
10:47山下さんは
11:1727歳の山下さんは
11:19しかし怯むことなく攻め続けた山下さんは
11:22その後の試合も一本勝ちを重ね
11:25金メダルを獲得しました
11:27あとは5秒
11:28日の丸の旗が食られています
11:30山下金メダルに向かいます
11:33世界の柔道家の頂点に立った山下さん
11:45しかしその過程で勝つことだけではない
11:49大切なことを学び取ったといいます
11:51私が柔道指導を受けた先生方は
11:59日本一世界一を目指す柔道を
12:02私に教えてくれましたけれども
12:04それだけではない
12:05人作り
12:07人間教育の柔道を合わせて指導していただきました
12:12試合で勝つことに
12:15自分の全てをかけるけれども
12:17それが全てではない
12:19それを人生に生かすこと
12:22あるいは己に打ち勝つこと
12:25も合わせて教えていただきました
12:28勝ち負けよりも人作りだと
12:30どちらも大事だって考え方ができませんかね
12:36なるほど
12:36例えばですよ
12:39まだまだ不十分ですけど
12:42私が柔道というものを出会って
12:44それを通して変わっていったということと
12:46私が柔道で世界の頂点を目指しながら
12:50変わっていった
12:51それを分けて考えることができないと思うんです
12:53そうですね
12:54どっちかっていう人もいるかもしれないけど
12:57どっちも大事なんだ
12:59平成12年
13:03競技スポーツとしての柔道が
13:05武道としての伝統と
13:07ぶつかり合う出来事がありました
13:09シドニーオリンピック
13:14柔道100キロ長級の決勝戦
13:16篠原真一と
13:18フランスのルイエの試合です
13:20後に正規の誤診と呼ばれた判定ミスが起こります
13:26さあまた奥襟を取って
13:30そして大島原の左を取っています
13:32帯を持っています
13:33これもあの固いですね
13:34今話しました
13:35これはすかします
13:36これは1本でしょう
13:39福神の一人は1本と言っていますが
13:42白い道着のルイエが内股を仕掛けました
13:46これに対して篠原は内股すかしで応じ
13:50両者とも倒れ込みます
13:52ガッツポーズをする篠原に対して
13:59しまったという顔を見せるルイエ
14:01この時篠原は自分の1本勝ちを確信していました
14:10しかし主審はルイエの有効と判断します
14:16結局このポイントの差により篠原は敗れました
14:21いやーこれは明らかな誤診です
14:26はい
14:26あの内股を仕掛けたのはルイエです
14:28ですけども篠原がそれを見事にすかして
14:31明らかな1本だったと思うんですよね
14:34はい
14:34なぜこのような誤診が起きてしまったのでしょうか
14:42武道の歴史を研究する中村民夫さんです
14:49中村さんは武道の伝統を受け継いだ高度な技を
14:54審判が見抜けなかったことが原因だと考えています
14:57私は武道全般の文化の中で非常に重要視してきたという
15:07その五の線というですね
15:09五の線というのはその後ろの先と書きますよね
15:13そうですよね
15:13ということはその五というものが表しているのは
15:16要するに自分はまず五手にあると
15:18いや五手という風に取っていけないんですよ
15:20それはもうむしろ逆に相手の攻撃を
15:24懐の中に引き込んでしまうというような意味合いなんですよね
15:27だからむしろ気持ちとしても
15:30ずっと相手に圧力をかけるような感じで
15:33それでかけといて相手が技を仕掛けてきたものですから
15:37それを懐に入れておいてポンと返すような
15:39要するに積極的な後回しというか
15:42積極的な後回しが先になる瞬間という
15:46例えばですね
15:48相手が土家の方が技をかけますよね
15:53内股に右足が入っていきますね
15:56かかってますね
15:57かかりました
15:57でこの瞬間に
15:59篠原の方がうまく外したという
16:01から逆に土家の方が外されたという
16:04おそらくここが分岐点になっているはず
16:06なるほど
16:07テレビの画面から見ても
16:09そういう見ましたので
16:10これはもう完全なこの線だという
16:13そういう風に捉えたんですね
16:14ただやっぱり線をかけている方
16:17先に技を仕掛けている方を追っかけているから
16:20そうするとどうしてもそういう形で
16:23先に技を仕掛けている人の
16:25技の方が有効じゃないかという
16:27前提でこう見ていっちゃうというかな
16:29これはちょっともう一度確認する必要がありますよ
16:34試合が終わった後
16:36日本代表の監督だった山下さんは
16:38必死に抗議しました
16:40しかし
16:41ドゥイエ有効の判定が
16:43覆ることはありませんでした
16:44感想としてはいかがだったんですか
16:51その判定が出た瞬間
16:52山下さんは
16:54まず信じられなかった
16:57まさかと
17:02試合が終わって
17:05出身を進めた人のところで
17:07私は抗議で詰め寄りました
17:08そしたらもう
17:10呆然としていましたですね
17:12要するに何が起きたか一瞬ですから
17:15分からなかった
17:17そして
17:18自分がとんでもないことを
17:21してしまったんじゃないかという風な
17:25感じの雰囲気がありました
17:26柔道がスポーツとして普及する中で
17:32武道としての伝統が忘れられようとしていることを
17:35象徴する出来事でした
17:36しかしこの時
17:41試合で敗れた篠原の中に
17:44伝統的な柔道の精神が息づいていたと
17:47山下さんは言います
17:49試合が終わった後
17:51いろんな
17:52マスコミから篠原は囲まれて
17:55質問を受けるんですね
17:59彼はこう言ったんですね
18:01自分が弱いから負けた
18:03心番には不満はない
18:06あれが自分の一方にならなくて
18:09相手の有効になったとしても
18:11残った時間が3分半あったじゃないか
18:15ありましたね
18:16もし俺に本当の力があったら
18:20残った3分半で逆転できたはずだ
18:23なるほど
18:24俺に本当の力がなかったから
18:27逆転できなかったんだ
18:28そういう思いがああいう発言になったと思うんですね
18:32ここでやはり多くの人に考えてもらいたいのは
18:38勝手の日本人ってそういう考え方を知ったんですよね
18:41なるほど
18:42人を責める場合に
18:44何かのせいにする場合に
18:47自分に足りないところはなかったのか
18:48自分は間違ってなかったのか
18:51まず自分を変えりみたんですよね
18:54他人のせいにしたり
18:57何かの責任転換したときに
19:01原因は見えなくなるし
19:03人間としての成長はなくなりますよね
19:06やはり我々が失いつつあった
19:13人間としての潔さ
19:15清さ
19:16そういったものをね
19:19篠原の姿に見るような思いがしました
19:21加納自五郎が大切にした柔道の精神は
19:28競技スポーツとなっても失われることはない
19:32山下さんはその思いを強くしたといいます
19:36その後山下さんは国際柔道連盟の理事となり
19:46柔道の精神を世界に伝える取り組みに力を注ぎます
19:50不正柔道技問題では
19:55柔道技に明確な規定を設けるとともに
19:59試合会場でのチェック機能を強化するようにしました
20:02また一本を目指す本来の柔道への回帰を提唱しました
20:13そうした声は柔道界にも広がり
20:16国際ルールから効果のポイントは削除されました
20:20さらに現在山下さんは
20:26伝統的な柔道の精神を啓蒙する活動に取り組んでいます
20:31心身を鍛えることで人として成長するという
20:35本来の柔道の価値を伝えようとしているのです
20:39柔道がスポーツの持つ教育的な価値というものを非常に大事にしたんですね
20:48スポーツ全体の教育的価値を認められたのは柔道先生だと
20:52柔道が特別に価値があるんだといったら
20:56柔道陣のおごりうるぼりだと思います
20:59なるほど
20:59ただ柔道が他のスポーツと違うのは
21:02そうした可能情労師範がそのことを明文化して
21:07それこそが柔道の目的であるとしている
21:10そこが違う
21:11他のスポーツにはそこまでは書かれていませんね
21:15ないです
21:16ただそれだけにやはり他のスポーツ以上に
21:20他の武道以上に柔道は世界の頂点を極めるとともに
21:26人作り人間教育も合わせて大事にしていくことが必要じゃないかな
21:30子どもたち以上に我々指導者にその姿勢が求められるんじゃないかなと思っています
21:36今柔道の国際化はますます進んでいます
21:44地方でも国際ルールに則ったマットー宿道場が整備され始めました
21:49国際試合に出ない一般の柔道家にとっても
21:56国際化は身近なこととなってきたのです
21:59柔道の誕生から国際化への道のりをたどってきた玉木さん
22:11柔道が世界的なものとなった今こそ
22:14その精神を理解し
22:16柔道のさらなる発展につなげていくことが大切だと考えています
22:21日本人の誇りとしての柔道というものと
22:29それと絶対に日本的なものにしなきゃいけないというものは違うと思います
22:35もう今国際的になったわけですから
22:39世界中の人が楽しむ柔道
22:41それを日本人は日本生まれたという誇りを持って
22:46世界で素晴らしいものだというものにしていくべきだと思いますね
22:50時々日本的でないことを嘆き声というのはやっぱり聞こえてくるわけですけれども
22:55これからはそういう後ろ向きの嘆きではなくて
23:00もっと前向きの柔道が
23:04日本生まれの柔道がもっと素晴らしいものになるという方向へ進むべきだと思います
23:10ご視聴ありがとうございました
23:40ご視聴ありがとうございました
24:10ご視聴ありがとうございました
24:40あなたのご覧のテレビはアナログ放送です
24:46こうなる前に地デジへの準備をお願いします
24:50困ったことわからないことがありましたら
24:53総務省地デジコールセンターまでご連絡ください
24:56さあ行こうまでもうすぐです
24:58ご準備をお早めに