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ショートトランスクリプション
00:01幸福層に移り住んだ純子に、運命の過酷な手はなおもその追求をやめようとしなかった。
00:09それは、実の父公平の行方を執拗に追う刑事たちの目であり、
00:15父としてすまぬ義理の母高子の回復ぶりであり、育ての親川田善之介の長長辞任であった。
00:23そして、運命はさらに残酷な牙を剥いて、純子の上に襲いかかってきたのだ。
00:31今のままの生活を続ければ、純子さんの心臓は、あと2年。長くて3年しか持たないのです。
00:45信じない。信じない。信じない。
00:48それは、わずか17歳の少女にとっては、あまりにもむごい宣告であった。
01:01死が目の前にあった。
01:04あと一歩踏み出せば、すべての悩みから解放される。
01:09純子の心に、甘い死の誘惑がささやきかけた時。
01:16純子。
01:18お父さんだ。
01:33いつかお前に、役者になってくれと頼んだ時のことを覚えてるか?
01:39死んだ母さんも女優になりたがってた。
01:52だが、一度も舞台に立てずに死んだ。
01:57その夢を、お前が果たしてくれるんじゃなかったのか?
02:00ん?
02:03母さんの夢は、父さんの夢だ。
02:06いや、それだけじゃない。
02:07誰よりも、お前自身の大きな夢じゃなかったのか?
02:11じゅんこちゃん、頑張ってね。
02:18お母さんとカエルに立派な女優になってちょうだい。
02:22あなたが立派な女優になることは、
02:24お父さんやお母さんや、
02:26あなたを愛しているすべての人たちの夢でもあるのよ。
02:35お母さん。
02:37それに、今、じゅんこに知られたら、
02:41父さん、何を目標に生きていけばいいんだ?
02:43お父さん。
02:53じゅんこ。
02:56死んじゃいかん。
02:58どんなことがあっても、
02:59自分から死んだって、
03:00バカなこと考えていかん。
03:02ごめんなさい、お父さん。
03:04もう二度とこんなことはしません。
03:07私、頑張ります。
03:13じゅんこ。
03:22お父さん。
03:24分かってるよ。
03:25それじゃ、
03:27私を助けるために。
03:31お前の命の方が、
03:33大切だ。
03:43お父さん。
03:53はい。
03:56お父さん。
03:59じゅんこ。
04:00頑張れよ。
04:02頑張ってくれよ。
04:03お父さん。
04:12お父さん。
04:15お父さん。
04:19お父さん。
04:20私が行けなかったんです。
04:34私があんなバカな真似さえしなければ、
04:37ごめんなさい。
04:38ごめんなさい、お母さん。
04:39お父さん。
04:48二度と出てこられないかもしれないわ。
04:59だって、
05:00警察はお父さんを、
05:02警官殺しの犯人に。
05:04おやめ。
05:05お願いだからやめておくれ。
05:07出てくるさ。
05:12警察がいくら小細工したって、
05:15いつかはきっと、
05:16本当のことはわかるもんさ。
05:18だって、
05:18真実ってやつは、
05:19一つっきりしかないんだろ。
05:21そうだろ、
05:21じゅんこちゃん。
05:26あの人は、
05:26帰ってくるさ。
05:29今にきっと、
05:32何もなかったような顔して、
05:35ただいまって、
05:37お母さん。
05:48加賀光平逮捕のニュースは、
05:51純子を取り巻く人々にも、
05:53大きな衝撃を与えた。
05:56あ、どうも。
05:56お待たせしました。
05:58またお近くに、
05:59お入りの説明はどうぞ。
06:01どうもどうも。
06:02ありがとうございます。
06:02じゅんこ。
06:07じゅんこはどこです?
06:09じゅんこ?
06:09今帰ってきたでしょ?
06:11あ、お母さん。
06:13じゅんこは東京だよ。
06:14いえ、今確かに、
06:16じゅんこの声が聞こえたんです。
06:17ほ?
06:18じゅんこ?
06:19どこに隠れてるの、じゅんこ。
06:21お母さん。
06:23じゅんこ?
06:24お母さん。
06:24じゅんこ?
06:25お母さん。
06:26じゅん。
06:26お母さん。
06:28さあ、さあ、さあ、さあ。
06:29さあ、お母さん。
06:29大丈夫か?
06:31さあ、はい、はい、はい。
06:33はい、はい、横になって。
06:38お母さん。
06:40あんた疲れてるんだよ。
06:42疲れてるから、
06:44いるはずもない、
06:44じゅんこの声が聞こえたりするんだ。
06:46あの子のことは、
06:50もう諦めたほうがいい。
06:52東京へ残るのは、
06:54じゅんこ自身の意思なんだ。
06:56わしらにはどうすることもできないんだよ。
06:59わかるだろう、お母さん。
07:06どうした、あきこ。
07:08おいおい、おい、お母さん。
07:11何を始めてきた?
07:12東京行ってきます。
07:14なんだって?
07:15東京行って。
07:17じゅんこを取り戻してきます。
07:19お母さん、
07:20今言ったことを聞いてなかったのかい。
07:21じゅんこはもう、
07:22私たちの手の届かないところへ。
07:24いいえ。
07:25悪いのは、あの女です。
07:28たかこさんが、
07:30じゅんこを無理やり、
07:31引き止めてるに違いないんです。
07:33お母さん。
07:34取り戻してきます。
07:36たとえ、
07:37あの人を殺してでも、
07:39私、じゅんこを取り戻してきます。
07:44母さん。
07:45何か。
08:01とうとう捕まりましたね。
08:07どうなさるおつもり?
08:08これでも、まだあの人と結婚するなんて言い張るつもりじゃ。
08:13君には関係ないことだ。
08:17僕が結婚したいと思ってるな。
08:19加賀純子という女性だ。
08:23彼女の父親が何をしようと。
08:25関係ないっておっしゃるの?
08:26彼はまだ警官殺しの犯人と決まったわけじゃないんだ。
08:29殺してるわ。
08:30正当防衛だ。
08:31言い逃れよ。
08:33君。
08:33ずいぶん大きな声だね。
08:37お父様。
08:41廊下まで筒抜けだよ。
08:44申し訳ありません。
08:45広沢君。
08:47君の言ってることは一見正しい。
08:50確かに、父親がどんな罪を犯そうと、
08:56法律的にはその娘には何の関係もない。
09:00しかしね、世の中には常識というものがある。
09:05まして君は、人の命を預かる医者だ。
09:10その医者が、人殺しの娘と結婚して、
09:14患者から信頼や尊敬を得られると思うかね。
09:17しかも、ここは、大学病院だ。
09:25医者は君一人だけじゃない。
09:29わかるかね。
09:30今もし君が、無分別な行為に走れば、
09:34病院全体が大きな迷惑をこむることになるんだぞ。
09:38私にやめろとおっしゃるんですか。
09:41辞表を出せば済むって問題じゃない。
09:45君だって大学を離れてしまったら、
09:47今までの研究を続けることなんか、不可能じゃないか。
09:51ん?
09:54心臓病で苦しむ多くの人々を救いたいという、
09:57君の希望も、
10:00水の泡になってしまうんだぞ。
10:05もう一度頭を冷やして、
10:07よく考えてみるんだね。
10:08偉いことになってしまったね。
10:29俺はまだ諦めていないよ。
10:36あの子を初めて見た日のことを、
10:40今でもはっきりと覚えている。
10:42あの時の気持ちを、何と言って表現したらいいのか。
10:52うっかりすれば、どこにでもいる平凡な少女として、
10:55見逃しそうなのかの中に。
10:58俺は、きらりと光るものを見た。
11:02目だよ。
11:04あの目は何かを持っている。
11:07何か目的を与えれば、必ず輝き始めるの違いない。
11:09俺は、あの時、そう信じたんだ。
11:15三上ちゃん、
11:18あんた、まさか、
11:20あの子に本気で惚れたんじゃ。
11:26うん。
11:29確かに惚れたのかもしれんな。
11:33四十男が十七の小娘に。
11:34演出家と女優の卵という立場も忘れておられたが。
11:43そんだんお笑い草だな。
11:47でもね、
11:49俺は別にそのことは恥だと思ってないんだ。
11:53俺と相手だからこそ、
11:57残り少ない人生を精一杯燃え上がらせてやりたいんだよ。
12:00今、なんて言った?
12:05残り少ない人生だって。
12:09加賀純子の命は、
12:12あと二年で燃え尽きる。
12:23先生。
12:24はい。
12:25どうもありがとうございました。
12:26ちょっとお便りに。
12:27あ。
12:30あああああ!
12:34おお私は。
12:36いっぱいときは?
12:42あなたが置くまで
12:49あああなたがいる。
12:52あああああは?
12:53ん
12:58あああ、 そんなあなたがそんなに
13:00me
13:09数実も 秋子を伴って上京した善の助は
13:15ある悲壮な決意を固めていた
13:30どうしたの こんなところでアパートの方に来てくれればよかったのに
13:38実は タコ子さんのいないところで話をしたかったんだ
13:44銃子 もう一度だけ訪ねる
13:48前 本当に基礎に帰る気はないのか
13:52お父さんそのことだったら前に返事をしろ 帰る気があるのかないのか
14:00順子 ここなら誰にも気がにいらないのよ
14:08あんた 本当は基礎へ帰りたいんでしょ
14:12それをタカ子さんに気がにして帰らないって言ってるだけよね
14:16お母さん
14:17さあ 一緒に帰りましょう
14:19あんな女のところにいたら 良くなる病気も悪くなってしまうわ
14:25帰りましょう 一緒に帰りましょう
14:29お母さんのある口はやめて 私が東京に残るって言ったのは
14:33誰に強制されたわけでもないわ
14:35おだまり あんたあの女に騙されてるのよ
14:38あの女は悪魔よ あんたに取り付いて殺そうとしてんのよ
14:43お母さん
14:46お父さん
14:50お母さん
15:01ジョンコ よく考えて返事をしろ
15:05お母さんがこれほど心配してるの
15:10それでもどうしても基礎へ帰れないと言うなら
15:13わしらは
15:15お前と親子の縁を絶つしかない
15:17お母さんはな
15:20お前のことで
15:22夜もろくろく眠れないほど気を揉んでるんだ
15:26これほど心配をかけて
15:29それでもまだ東京に残ると言うなら
15:31お前はもうわしらの子供じゃない
15:34悪魔のようなあの女にくれてやるしかないんだ
15:38悪魔に見入られた娘に用はないからな
15:41どうなんだ
15:44親子の縁を切っても
15:46まだ東京に残りたいか
15:49二度と基礎の土が埋めなくなっても構わないのか
15:53うるさいんだよ いつまでもごちゃごちゃ言ってんじゃねえよ
16:01帰らないとなんか言ったらわかるんだよ
16:04私はね
16:06もう川田純子じゃないんだ
16:08加賀純子なんだよ
16:11純子
16:12いくらあんたらが私を拾ってくれたからって
16:16いつまでも親だ親だと恩気せがましくやれちゃ
16:19迷惑なんだよ
16:20迷惑
16:21純子あなた
16:24うるさいっつってるだろ
16:25ああいいとも
16:27この際はっきり言ってやるよ
16:29親子の縁はこっちから切ってやら
16:32純子
16:33あんたってこ
16:35お母さんお母さん
16:38よしなさい
16:39これでわかっただろう
16:42わちらが育てた
16:44素直で可愛い純子は
16:47もういなくなってしまったんだよ
16:49そう
16:51あんたってもともとそんな子だったのね
16:55いいわ
16:57勝手になさい
17:00好き勝手なことして
17:02勝手に死んじゃえばいいわ
17:04お母さん
17:09純子はこういう子だったんだよ
17:13これでわかっただろ
17:16さあ貴様帰ろうか
17:18さあさあ
17:21お母さん
17:22帰ろう
17:23ご視聴ありがとうございました
17:53苦しい胸の内をはっきりと悟っていた
17:56自分を思うあまり身も心もズタズタになった
18:01秋子を救う道は
18:02愛を憎しみに変え
18:04自分の存在を秋子の心から消し去るしかないのだと
18:09それは純子にとって血を吐くよりも辛い芝居であった
18:16許してね
18:19許してねお母さん
18:22おかえり
18:36どこ行ってたの
18:39おかえり
18:50どこ行ってたの
18:51え、ちょっと
18:53お母さん
18:56ねえ見てよ
19:01今日はかなりいい線いってるんだから
19:03お母さん
19:08やるいじゃない
19:09そうよ
19:10その調子
19:11今度はね
19:13捕まらないで歩いてみせるからね
19:15それ
19:24いっち
19:26あ、あぶない
19:27手出しちゃだめ
19:29あ、あ、あぶない
19:30あ、あ、あぶない
19:31手出しちゃだめ
19:34ほら
19:36あいんよ
19:37おはじょうつ
19:39こ、ごろぶはおへたって
19:42しっかり
19:43頑張って
19:52あ、やった
19:53大成功
19:54お母さん
19:55お母さん
20:01どうしたの純子ちゃん
20:03ううん
20:04なんでもないの
20:07さお母さん
20:08もう一度歩いて
20:09ええ、またやるのかい
20:11当然よ
20:12これぐらいで満足したらだめでしょ
20:14疲れたよ
20:15少し休ましておくれよ
20:16余ったれんじゃないの
20:18さ、歩いて歩いて
20:19まったくきついこと読んだから
20:21文句やすぎせさてやれ
20:22はい
20:23はい
20:24まるでスポコンモノの鬼コーチだよ
20:26ふふふ
20:31それ
20:33いえ
20:34どうしたんだ?
20:44ううん
20:46別に
20:47さあ
20:48続けましょ
20:52じゃあ
20:53お買い物に行ってきます
20:54悪いねいつも
20:56何言ってるのよ
20:57そうだ
20:59今夜は
21:04今夜はお母さんが歩けるようになったお祝いに
21:06タイのお頭付きにしよっか
21:08バカ言うんじゃないよ
21:10いわしのお頭付きでたくさん
21:13そうね
21:15あれ栄養満点だもんね
21:17じゃあ行ってきます
21:19いわしのお頭付きでたくさん
21:21そっちにいらがやっていません
21:22なにいわしのお頭に行っています
21:23おい
21:24また
21:25ほら
21:29くらやろう
21:39いわしのお頭をふぉ
21:40って?
21:41先生
21:48そうか
21:50そんなことがあったのか
21:53いくら
21:55そのお母さんのためでも
21:57あんなことを言うなんて私
21:58わかるよ
22:00さぞかし辛かったろうね
22:02しかし君という人は
22:06どうしていつも他人のことばかり
22:09考えているんだ
22:10なぜもう少し自分のことを
22:13考えようとしないんだ
22:14他人なんかじゃありません
22:16血は繋がっていなくても
22:21私にとっては
22:22みんな大切な人ばかりです
22:25純子さん
22:28僕にとって君は
22:30間違いなく誰よりも大切な人間なんだ
22:33いつも見守っていたいんだ
22:36だから
22:37先生
22:39私は
22:41もうすぐ死ぬ人間なんです
22:44純子さん
22:45死ぬことがわかっているのに
22:47先生のお嫁さんになることはできません
22:50それでもいいと言ってるんだ
22:51たとえ2年でも3年でも
22:54僕は君の力になりたい
22:56君が周りの人たちに尽くしているように
22:59僕は君のために
23:02ありったけの力を尽くしたいんだ
23:04純子さん
23:16嬉しい
23:18嬉しい
23:19ものすごく嬉しい
23:20でも
23:22でもダメなんです
23:24ダメなんです
23:25純子さん
23:28こんな体で
23:44先生と結婚なんて
23:46先生と結婚なんて
23:47できない
23:48私には
23:50どうしてもできない
23:52自分の人たちに尽くしたい
23:54純子さん
23:56僕は諦めない
23:59僕の妻は君だけだ
24:02うん
24:03なあ
24:05いい加減に観念したらどうなんだ
24:09貴様は11年前公務執行中の警官を
24:12些細なことから包丁で視察して逃亡した
24:15そうだな
24:17私は女に絡んでた客を止めに入っただけです
24:20まだそんな言い逃れを言うつもりか
24:23女絡んだのはお前の方だとはっきり証言してんだぞ
24:27それは
24:28あんたがそう言わしてるだけだ
24:32警察がでっちゃいやってるってのは
24:34カネラ
24:37だったら教えてもらいましょうか
24:39あの経過は一体どんな公務を執行中だったんですか
24:46酒飲んで
24:48くだまきながらできる仕事って一体何ですか
24:52そんなことを教える必要はない
24:54ん
24:57ん
24:59その両親と決別し
25:05信行の愛さえ拒んだ純子にとって
25:08唯一の生きる支えは土工兵の広い胸であった
25:13刑事さん
25:17面会は禁止だ
25:19科学王兵の取り調べはまだ終わってない
25:23したがって謹慎者というのも面会は許可されん
25:26あれ
25:27言わなかったな
25:31面会はできんつってんだ
25:33分かりました
25:34では
25:36ことづけだけでも伝えていただけないでしょうか
25:40ことづけ
25:41ダメでしょうか
25:44行ってみろ
25:45はい
25:46お父さん頑張ってください
25:49お父さんが帰ってくる日だけを楽しみに
25:53お母さんと二人いつまでも待っています
25:56順子は
26:07順子はそう言ったんですか
26:10そうだ
26:11ちょっとした心肌悲劇並みの口調でな
26:15順子
26:20加賀どうだ
26:23あの子のためにも
26:25そろそろ本当のこと喋っちゃ
26:27ん
26:28加賀
26:30お前そろそろ素直に認めろよ
26:33私は正当防衛です
26:36貴様っちゃっちゃまったく
26:39貴様が顔張れば張るほど家族が辛い目に遭うってことはまだ分からんのか
26:43いえ
26:44両方や娘のためにも
26:46そんなでっちゃいを認めるわけにはいきません
26:48いえ
26:50いえ
26:52いえ
26:54いえ
26:55いえ
26:56いえ
27:00いえ
27:01いえ
27:02いえ
27:03いえ
27:04いえ
27:05いえ
27:06いえ
27:08いえ
27:09いえ
27:10いえ
27:11いえ
27:12いえ
27:13いえ
27:14ひたすら義理の母高子へ尽くす順子の胸の内に
27:17常に行き来している者は言うまでもなく
27:24自らの死への恐怖であった
27:27いえ
27:28いえ
27:29いえ
27:30いえ
27:31いえ
27:32いえ
27:33いえ
27:34いえ
27:35いえ
27:36いえ
27:37いえ
27:38いえ
27:39いえ
27:40いえ
27:41いえ
27:42いえ
27:43いえ
27:44いえ
27:45いえ
27:46いえ
27:47いえ
27:48いえ
27:49いえ
27:50いえ
27:51いえ
27:52いえ
27:53だっていつまでも遊んでるわけにもいかないだろ
27:56と言ってもこの足じゃ
27:59表で働くのはちょっと無理みたいなんだけど
28:04お母さんはそんなこと心配しなくていいのよ
28:06お仕事は私が見つけますから
28:09何言ってるんだよ
28:10あんたには女優になるっていう大きな目標があるんじゃないか
28:21どうしたの
28:21お母さん
28:25私も
28:28純子ちゃん
28:31これだけは言っておくよ
28:34あんたは家へ来たばっかりに
28:38とんでもないことに巻き込まれてしまった
28:41そんないいから聞きなさい
28:44あんたには本当に申し訳ないと思ってる
28:48でもあんたが自分の意思で東京に残るって言ってくれた時は
28:56涙が出るほど嬉しかった
28:58今度は私がお返しする番だよ
29:03こんな体で満足なことができるわけもないけど
29:08でもあんたと二人食べていく分ぐらい
29:11母さんはどんなことしても稼いでみせる
29:14だからあんたは余計なこと考えないで
29:18女優になることだけを考えてちょうだ
29:20お母さん
29:22いいね
29:24もう時間はそんなに残す
29:26時間が残されてないからこそ
29:51あんたは自分の道をまっすぐ進むべきよ
29:56女優になりなさい
29:58残された命を力いっぱい生きてちょうだい
30:03ねえ純子ちゃん
30:06お母さん
30:08お母さん
30:29ん
30:31おらけなしています
30:33ああああああ
30:35何よっ
30:37すごいじゃない
30:39やったーねひらみー
30:41そんなことないってほら純子役って書いてるじゃん
30:47すげー
30:49今のうちに最後の練習しておいたら
30:51何よそれ皮肉別に何が別にややめろようちはもめは
30:57そうよとにかく私たちの中からスター候補が一人出たんだから
31:01私も頑張らなくちゃさあ私だって負けないわよ
31:05あー私もちょい役でいいから早くテレビに出てみたいよ
31:09ねー
31:11おはようございます
31:17どういうことなんだこれは
31:19俺はこんなドラマに出てもいいと許可した覚えはないぞ
31:23だってじゃないだろ
31:25だってじゃないだろ
31:27演技のいろはもろくにこなさないうちに
31:29テレビに出たって恥をかくだけだ
31:31すぐに局へ行って断ってこい
31:35どうした
31:37俺の言うことが聞けんのか
31:39聞く必要ないわ
31:41おはよう
31:43おはよう
31:45宮古先生
31:51この子を推薦したのはあたしよ
31:53なぜそんな勝手なものをしたんだ
31:55ヒロミはこの塾の俺の生徒だよ
31:57あたしの生徒でもあるわ
31:59あなた
32:01今日からあたしも暇な時にはこの子たちのレッスン見ることにしますからね
32:05それ本当ですか?
32:07本当よ
32:09いいでしょうね
32:11いいえ
32:13文句言える立場じゃないわよね
32:15なにしろあたしはこの三上スタジオの大株主ですよね
32:19第一あなたに任せておいたんじゃ
32:22この三上スタジオが倒産するのは目に見えてるの?
32:25俳優塾だって事業であることに変わりはないんですからね
32:29ただの道楽でやっていけるほど甘くはないのよ
32:33いいこと
32:37私はこの人と違って
32:41たとえ研究生の間でもチャンスさえあれば
32:45どんどんみんなをテレビや映画に出られるようにしてあげますからね
32:48もちろん
32:51マージンはいただくわよ
32:53言っちゃ悪いけど
32:55あなたたちの結社だけじゃとてもやっていけませんからね
32:58どうする?
32:59結構ですとも
33:01チャンスさえ与えていただけたらマージンなんていくらだってね
33:04よろしくお願いします
33:06先生ほっときなさい
33:12さあレッスン始めるわよ
33:15一度は女優への道を諦めた純子であったが
33:35入江広見抜擢のニュースは激しい戦亡となって純子の心を揺さぶった
33:42さあレッスン始めた
33:47さあレッスン始めた
33:52さあレッスン始めた
33:56おっは
33:57ス?
33:58ス?
33:59ス?
34:00ス?
34:01ス?
34:02ス?
34:03ス?
34:05ス?
34:06ス?
34:07ス…
34:08ス?
34:11眠れないのかい
34:24ごめんなさい
34:29起こしちゃった
34:31勝手に目が覚めたんだよ
34:35あら
34:39まだこんな時間なの
34:41あのぐらいのリハビリでくたびれ果てるなんて
34:46私も年だね
34:49眠れないんだったらお風呂でも行ってきたら
34:54まだやってるはずだよ
35:11あなたにお話があるの
35:16やめる
35:18広沢先生が病院を辞めになるんですか
35:23そうなるかもしれない
35:25誰のせいだか言わなくても分かってるわね
35:30でも私
35:32先生の結婚申し込みには
35:34お断りになったそうね
35:35その点は素直に感謝するわ
35:37でも彼はまだ諦めちゃいないわ
35:41お願いがあるの
35:46どこか遠くへ引っ越してくださらない
35:50え
35:52彼がいつまでもあなたにこだわってるのは
35:55あなたがすぐ手の届くとこにいるからよ
35:58目の届かないところへ行ってしまえば
36:00彼だって諦めると思うわ
36:02あなたはそんなことしてまでも先生を
36:06ずいぶん身勝手な女だと思うでしょ
36:09でもね
36:10突き詰めればみんなあの人のためなのよ
36:14あなたも知ってる通り
36:17彼の専門は心臓病だし
36:19その分野ではうちの大学は超一流なのよ
36:23施設も十分整ってるし
36:25研究資料にもことかかないわ
36:27もし彼が大学を辞めたら
36:31少なくても
36:33彼の心臓病専門家としての
36:35一生命は終わりになるわ
36:37あなた彼をそんな目に合わせたい
36:56どこへ行くの
36:57引っ越しはできません
37:00私には体の不自由な母がいますし
37:06第一
37:07引っ越ししたくても
37:08行くあてもお金もありません
37:10でも
37:12これだけはお約束します
37:15私
37:16どんなことがあっても
37:18広沢先生とは結婚しません
37:20本当に
37:23誓える
37:25誓います
37:27ですから先生に伝えてください
37:30もう二度と私のところへは来ないでください
37:34私も病院へは行きません
37:36本当にその通り伝えてもいいのね
37:39言った通り伝えてください
37:43待ってよ
37:45送ってくわ
37:47ちょっと純子さん
37:49愛する人のためであった
37:58その頃
38:01信之も同じジレンマに悩んでいた
38:04辞表を叩きつけて大学を辞めるのは容易い
38:09だが
38:11そうなれば心臓病の研究は思うに任せなくなる
38:15そしてそれは
38:17愛する純子の命を一日でも長く守り通そうとする
38:21信之自身の意思に反することになるのだ
38:25どうすればいいんだ
38:28どうすれば
38:32どうすればいいんだ
39:02一瞬
39:10純子の体からやり場のない怒りが吹き上げた
39:13来ossa
39:17何々言ったよ
39:20何言ったよ
39:21何言ったよ
39:262007
39:29何言ったよ
39:31何言ったよ
39:32待ってよ
39:34Θetzung
39:35γάげてるよ
39:36何言ったよ
39:37何言ったよ
39:39HAM
39:41やめろ
39:45なんだよおっさん
39:50余計なおせっかいすんじゃねえ
39:52こんでかよ
39:53じゅんこ
39:56余計なまねするなんて言ってんだろ
39:58ほら
39:58いつまで生きがってるんだ
40:01さっさと家へ帰れほら
40:03消えろ
40:05帰れ
40:06避けろ
40:07しょっしょー
40:08おいでー
40:09なでおら
40:16じゅんこ
40:23じゅんこ
40:26あすんだ
40:27あたして
40:28じゅんこ
40:30じゅんこ
40:34じゅんこ
40:37大丈夫か
40:41しっかり拾う
40:42じゅんこ
40:43じゅんこ
40:45じゅんこ
40:46じゅんこ
40:50じゅんせん
40:51ばかやろ
40:54なんだってあんなバカなまではしたんだ
40:58お前自分の体のことを忘れたろうか
41:02いいんです
41:04どうせわたし死ぬんですから
41:07ばあ
41:13でも
41:18でもわたしこのまま死にたくない
41:22こんなみじめな思いのまま死にたくない
41:25じゅんこ
41:36お前が生き続ける方法が一つだけある
41:41だがこの2年のあいだにデビューすることができたら
41:53つくりに永遠にお前の姿を残すんだ
41:56お前自身の命はあと2年かもしれない
42:02だがこの2年のあいだにデビューすることができたら
42:05かがじゅんこは永遠に生き続けることになる
42:10何よ目的も希望もなく
42:13ただ1日でも長く生き続けることを望むか
42:17たとえ命を削っても
42:19輝いて生きることに欠けるか
42:22じゅんこ
42:24それはお前の決心一つだ
42:28先生
42:34生きろじゅんこ
42:36女優として
42:39スタートして
42:42輝いて生きることに欠けてみろ
42:45先生
42:48消えかかったじゅんこの夢に再び火が灯った
43:08しかしそれはやがて確実に訪れる使徒の競争でもあった
43:18ご視聴ありがとうございました